ちくま2月号 3

 年末年始のテレビ番組というと、かっては正月向けにとりだめしたあったものを
放送したりで、おせち番組と揶揄されていたものです。いまでは二日間にわたって
行われる「箱根駅伝」を見るとお正月がきたことを実感する人もいるのでありま
しょう。「箱根駅伝」は、関東学連の大会であって、関東ローカルのものだと、
関西びいきの当方はいうのですが、これの中継が定着してから、各大学はこれに
出場することで、学校を売り込み、学生確保につなげる、そうした場になっている
ようです。ちょっと前までは、ラジオでしか中継をしていなかったのにね。その
昔のラジオ中継では、各大学の支援車から一、二、一、二とかけ声をかけるコーチの
声が良く聞き取れました。
 うるさがたの佐野真一さんが「感動した」と書いていうのはフジテレビ系で放送の
「私たちの時代」というドキュメンタリーです。
一時期、相撲の土俵にあがって「感動した」といって優勝杯をわたした首相が
いましたが、「感動した」なんてめったにつかう言葉ではないですね。
 佐野さんの文章からです。
「 この感動を人に伝えるのは、ひどくむつかしい。過疎化により統廃合寸前に
ある石川県立門前高校の女子ソフトボールチームが取材対象である。
スタッフは三年にわたって奥能登にあるこのチームに密着し、上質としか言いようが
ない青春ドキュメントに仕上げた。
 この作品の一番の功績は、私たちがすっかり忘れていた感動を思い出させてくれた
ことである。・・
 この番組を作ったのは、横山隆晴というフジテレビのドキュメント部門を代表する
有名プロデューサーだということは、後で調べてわかった。」
 いまどき一本のドキュメンタリーを制作するのに、3年も取材にかける会社がある
ということに驚きです。大体NHK以外で、ドキュメンタリー番組を制作からやって
いる会社がどのくらいあるでしょう。フジテレビは、給料が業界でも一番高いところ
といわれていますので、このドキュメント一本に、どのくらいの金がかかっている
ことやらです。
 もちろん、当方は時間と金をかけずには良い作品はできないと思いたいのであり
ます。このチームが制作した中国人労働者とその家族を取材した作品や北海道の
別海の高校生の作品などは、以前に見たことがあります。
 マスコミは不況のまっただなかで、テレビ会社もたいへんでありましょうが、
このような渋い番組を作るためには、その軍資金をあつめなくてはいけなくて、
そのためには、お笑い番組で視聴率をとって、スポンサーを獲得することが必要
ということかもしれません。