「en-taxi」

 どちらが付録かわからないといって「en-taxi」第31号を手にしています。
en-taxi」という雑誌が創刊となったのは、2003年のことです。坪内祐三さんが
編集にかかわっているということで、新聞で取り上げられているのを見て気にして
おりました。自宅の近所の本屋には、入荷しないのでなかなか本やでは手にすることが
できないものでありまして、大きな町の本屋に行ったときに立ち見をしておりました。
 最新号に掲載されている、既刊のリストを見てみますと、当方が最初に購入した
のは、2005年夏 第10号であるということがわかりました。この第10号は、特集が
「祝『東京タワー』刊行記念」とあります。この雑誌の編集責任の一人であるリリー・
フランキーの作品がまとまったことによりますが、映画等が制作されてベストセラーに
なった「東京タワー」は、「en-taxi」に連載されたものでありました。
 当方のお目当ては、この時に付録でついていましたのが、洲之内徹さんの小説
「棗の木の下」であったからでした。
 昔の雑誌のようにはさみこみで文庫サイズの冊子が付録でついてくるというのが、
en-taxi」の売りの一つであります。最初に付録についたのは、第9号の唐十郎の新作
戯曲「鉛の兵隊」でありました。
 前号は坪内さんの連載「文芸綺譚」で「川崎彰彦」さんのことを取り上げていました
ので、購入しました。この号は付録がありましたが、小島信夫さんの「私の作家評伝」
からの抜粋でありました。( この「私の作家評伝」は、その昔にあった潮文庫
完本がでていまして、それを買っておりました。潮文庫で手元にあるものは、そんなに
ありませんです。)
 扶桑社というのは、フジサンケイグループの出版社であります。グループは保守的
な体質でありますからして、ここのグループからの雑誌の代表は「正論」でありますが、
さすがに、これにはちょっと手が伸びませんです。
 「正論」という雑誌は、目次を見るだけでも、首尾一貫しているのがうかがえますが、
それと較べると、「en-taxi」は、雑多な人が寄稿していて、この猥雑さが魅力かも
しれません。この時代でありますから「en-taxi」も営業的には厳しいだろうと思う
のですが、すぐに廃刊とならないのが、他の新聞系の出版社と較べて辛抱強くてよろしい
ところであります。進歩的といわれる新聞社からの雑誌で、気になるものがあったで
しょうか。(この「en-taxi」は、そのむかしにあった総会屋さんたちがスポンサーと
なって刊行していた雑誌を思いおこさせます。「現代の眼」とか「構造」という雑誌で
ありますが、ともに新左翼系の論壇雑誌のようなものですが、会社の体質と編集者の
スタンスは、まったく正反対を向いていました。たしか、総会屋への法規制が強化
されたことにより、広告をとることができなくなって、これらの雑誌は姿を消したので
ありました。)