杉浦康平のデザイン

 デザイナーの杉浦康平さんといえば、最近休刊がきまった「銀花」のデザインを
創刊から担当していた方ですが、その仕事の全体を伺い知ることのできるものが
なくて、残念に思っていましたが、やっと「杉浦康平のデザイン」という新書が
まとまりまして、すこしは見えるようになってきました。

杉浦康平のデザイン (平凡社新書)

杉浦康平のデザイン (平凡社新書)

 本日の休憩時間にすこしなかをのぞいただけですが、普通のデザイナーという枠
にはおさまらないスケールでありまして、デザインを通じて思想を表現するという
ようなもので、このように考えると、これまで杉浦康平装幀集というようなものが
でないのも理解できることです。
 杉浦康平さんは32年生まれで、新制の都立新宿高校から芸大建築学科を卒業して
デザイナーとなるのですが、都立新宿というと旧制六中ですから、晶文社の小野
二郎さんのすこし後輩となるようです。どこかで接点があったでしょうか。
 杉浦康平さんの装幀で一番ポピュラーであったのは、講談社新書でしたが、これは
先年リニューアルで杉浦さんは担当を離れ(もっとも、講談社新書は最初から
杉浦さんではなかった。)、いままた「銀花」も姿を消します。これって、相当に
淋しいことではないでしょうか。
「 内容を表紙に反映させる手法を全面的に開花させたのが、杉浦のライフワークの
ひとつといってよい1970年創刊の『銀花』(文化出版局)である。現在も続く、
もっとも長い仕事。花森安治が創刊以来30年にわたって手がけた『暮しの手帖』を
抜いて、ひとりのデザイナーが継続してかかわる表紙としては最長記録を更新中と
いってよいだろう。
 杉浦の提言を受け入れた編集長、細井冨貴子の決断で、第五号からは裏表紙から
広告が消えた。その結果、背をはさんで左右にパノラマ状に広がるという、一般の
市販誌ではめったに類例を見出すことができないほどの稀有な展開が可能となった。
季刊という余裕ある刊行スタイルも息の長い取り組みを可能にする要因であろう。」
 せっかく、このように著者は書いているのですが、これが本になった時点で「最長
記録更新中」といえなくなっているのが、いかにも残念。