「みすず」読書アンケート6

 今年の「みすず」読書アンケートにおいて、とりあげている本をみて「みすず」
らしい人だなと思うのは、小尾俊人さんとか片山敏彦さんにつながっている人で
ありますね。
 この方は、あまり「みずず」らしい人と思っていなかったのですが、そうした
二冊をあげています。
 松尾尊允( 日本近現代史
 「 昨日と明日の間 編集者のノートから」 小尾俊人 幻戯書房 09年
「半世紀近く『専門領域での最高の成果で』しかも『学問の分野に刺戟を与える
ような書物』の刊行をめざし続けたみすず書房編集責任者の回想録集。近現代日本
の著述家と本について知られざる側面を照らす。」
 「 あたたかい人」高杉一郎 みすず書房 09年
「上の小尾本に登場する高杉一郎の小品集。『あたたかい人』とは上林暁を描く一文
だが、高杉自身もあたたかく、かつきびしい人であった。」
     
 今回のアンケートを見て、「みすず」らしくない人といえば、これは伏見憲明さん
が一番でありますかね。森本達雄さんとか村上光彦さんの対極にあるような人で
あるように思います。このような人がアンケートに登場するというのが、いまの
みすずらしいのかもしれません。
 伏見憲明さんの勧める本は、どれも一般的ではなくて、もちろんみすずからの本
ではありません。
「『ふつうの生活』もまた別の視角からとらえると『特別な生活』のバリエーション
にすぎないことが、永易至文『同性パートナー生活読本』(緑風出版)を読むと
わかる。この本は同性カップル向けの『実用書』で、同居や税金や保険や介護、埋葬
に至るまでの具体的な事柄が、現在の法律や社会慣習のなかでいかに可能であるか
可能でないかを、取材や調査によって明らかにしたもの。『ふつうの夫婦』でないと
困難なことも多いが、できることも案外ある。なかには同性のパートナー関係を
法人にして保護する、などという荒技も紹介していて面白い。そしてマイノリティの
現実のほうから、現在の社会の輪郭を浮き彫りにすることができるという意味で、
『一般の読者』にも興味深い一冊であることは間違いない。」
 このような実用書がでていても、いっこうに不思議ではないのですが、こうした
実用書が、みすず読書アンケートに登場するということが驚きで、時代がかわった
と強く感じることです。