そういえば、臼田捷治さんには「装幀列伝」という著書がありました。
04年9月にでた平凡社新書ですから、自宅のどこかにあると思っていたのですが、
比較的簡単に見つけることができました。この前著においても、杉浦康平さんは、
大きく取り上げられているのでした。
- 作者: 臼田捷治
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2004/09/01
- メディア: 新書
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これまでの日本のデザイナーは西洋文字を偏愛し、その扱いには苦労してきたが、
日本人として日本文字を使うことにはおろそかであったから、日本文字のよさを
再認識しなければならないと指摘したうえで、次のように言及している。
『その時、文字に対する天才的な人間がでてくれば日本文字を美しく書くだろうと
言ったら、杉浦康平がでてきましたね。あの人の登場以来、日本字を取り入れる
ことによって美しいものをつくるようになりましたね。わたしに今それをやれと
いってもまったく杉浦康平のまねになってしまう。』(74年の東洋インキNEWS)」
亀倉雄策さんが、このように絶賛でありますからね。日本の高度成長期の
イベントというと東京オリンピックですが、建物では丹下健三デザインのものが
話題となって、いまも使われています。このオリンピックのポスターというには、
亀倉雄策のものでした。ほとんど国家御用達のデザイナーのような印象を受けた
ものです。デザイン界の天皇とも思えるような亀倉が「文字に対する天才的な人間」
と、杉浦のことをいうのですからね。
杉浦康平さんは、あとに続くデザイナーにとって非常に重たい存在になったこと
は違いないのですが、杉浦さんはどんどんと先を行く人ですから、いつまでたっても
遠い存在であったでしょう。
杉浦さんのデザインした本で、雑誌と講談社新書をのぞくと一般的なものは、
70年代のなかばが一番活発であったのではないかと思うのですが、埴谷と足穂では、
装幀にひかれても、なかなか購入することができませんでした。
そんなことで、当方の書架に杉浦さんが造本を担当した本は、意外にも少なく、
内容見本を大切に保存していたのでありました。