ことしのおすすめ 7

 連日、ことしのおすすめという表題で記していましても、香具師の口上の
ようでありまして、いっこうに本題にはいることがありません。日々更新を
しております拙ブログも、今年残すところは3日分でありますので、すこしは
今年に読んだ物からおすすめのものを書かなくてはです。
 まずは、「富士さんとわたし」 山田稔 編集工房ノア でしょう。
なんといっても、今年一番楽しみました。いろんな切り口があった、山田稔版の
「先生とわたし」です。
 「手紙を読む」というのは、山田稔さんの文学の師匠(のひとり )である
富士正晴の得意の戦法でありますが、富士正晴が自分の文学の師匠(こちらは
ただ一人の)である「竹内勝太郎の形成」という著作にならい、富士正晴との
間でかわされた書簡によって、師匠の人間像を浮き彫りにするとともに、
バイキングや、日本小説を読む会などという文学運動も描き出しています。
 富士正晴さんは、とんでもない時間に酔って電話をくれるということで周囲の
人は迷惑をしたはずでありますが、そのような迷惑を乗り越えなくては、この
ような師弟関係はできないのかと思いますと、これはなかなかできるものでは
ないと思うのでありました。
 昨年の「山口昌男の手紙」に引き続きで、手紙を読むのが好きな小生は
楽しんだことです。
 いまもeメールは活発にやりとりされているのですが、これは書簡集のような
形でまとめられのでしょうか。文学者の個人全集というものが、これからは
どんどんとでるのが難しくなりそうですし、それに書簡が収録されるのは、
ほとんど考えられませんが、作品の舞台裏の事情などを書簡などで記していると
したら、読んでみたいと思うことです。