銀花118号から 2

 昨日に引き続き99年刊行された雑誌「銀花」118号の「書物雑記」で紹介され
ている本についての話です。
 日夏耿之介の門下に、「關川左木夫」さんという方がいらしたそうです。
この方は、英文学者でありますが、「本の美しさを求めて」を著した愛書家でも
あったとあります。
「 書物に触れる機会に恵まれない北海道の開拓村に育った關川は、早稲田大学
 進み、日夏耿之介に師事するが、愛書の先覚者を自認する耿之介の周囲には
 名だたる愛書家や蔵書家が集まっていた。書物の美に対する純粋な空気に触れた
 若き門下生は、後年も利殖に手を染めることがなかったのである。
  貴重本を学生にも分け隔てなく手渡してみせる關川に接して『愛書家と呼ばれる
 人達』に対する偏見が払拭されたと編者は回想する。」

 關川さんは、「書物の美をあくまでも『美しい内容をそれにふさわしい美しい形態に
よって、能う限り多数に伝達すること』に求めたのであって、内容を置き去りにして
造本美のみを強調したり、限定本や稀覯本の価値を市場動向で計るような態度とは
一線を画していた。」

 99年にこの雑誌を手にしたときも、この文章は目にしたはずでありますが、
まったく記憶に残っていません。「貴重本を学生に分け隔てなく手渡す」というのが、
具体的にどのようなことをさすのか、気になることであります。
 今回、引用した文章は、關川さんが82年に創刊した「玻璃」という冊子が關川さんを
追悼する特集号を紹介したもののなかにあったのでした。
 ちょっと気になることでありました。