「深夜の読書」2

 ブックオフ辻井喬さんの本を購入することになった背景には、小生の12月
1日のブログに「羊の歌」さんが、「ハーバーマスを愛読する経営者なんて、
他には堤清二くらいかもしれません。 」と書き込んでくれたことがあります。
小生は、辻井喬堤清二)さんに関しては、その昔に共産党の学生細胞で活躍した
とか、父親の秘書のようなことをやっていたということは承知しているのでありますが、
ペンネームである辻井喬の名前で発表していた小説とかのことは、まったく手に
してはいないのでありました。今から20年ほど前に刊行された、「深夜の読書」
新潮文庫のカバーには、新潮社のハードカバー本で「不安の周辺」という著書の
広告がのっていました。この作品の宣伝文には、「広告会社の社長交代劇の背後には
何があったのか? 経営者の内面を赤裸に描出して様々な視点から実相に迫って
いく異色作」とあります。この作品は、どのようなものであったのでしょうか。
 この文庫本に収録されている文章で一番古いものは33年ほど前のものであり
ますが、言及される著作や著者は、ハーバーマスこそでてこないものの、
ホイジンガベルグソンバシュラールから中野重治瀧口修造武満徹まで
多岐にわたります。
 もともとは思想家のような資質の方なのでしょう。
「深夜の読書」という本のタイトルになっているのは、新潮の「波」に連載の
ものですが、そのなかに次のようにあります。
「この半年間、講義録を作る必要があって、毎晩社会科学、人文科学関係の本を
読んでいた。そこで今更のように気づいたことは、学術用語の、難解さと他の分野の
言葉との違いである。・・・普通の国では文学と学術用語のあいだには、我が国に
おけるような境界はないようである。感性の表現と論理の表現が殊更異質の言葉に
よって表わされることによって、両方がリアリティを失う結果になっているのでは
ないか。言葉の分裂とは、感性と論理の分裂に他ならない。」

 普通の国ではと不用意にあるので、思わず日本は普通でないのかよとつっこみを
いれたくなりますが、「毎晩社会科学、人文科学関係の本を読んでいた」とあるの
には、一日の睡眠時間はいったいどのくらいあったのかと思います。
自分の勤務する会社の社長に、一日3時間以上眠るのは、時間を無駄にしている
なんていわれたら、仕事やめたくなるかもしれないですね。