湯川書房のこと9

 連日、「仙台が親戚」様に話題をいただいております。本当にその時代のなかに
いる人にしか体験できない貴重なお話ばかりであります。昨日の書き込みでは、以下の
ところに、一番反応をしたのでありました。

戸田勝久さんが装幀装画した加藤一雄「無名の南画家」挿絵の木版画が戸田さんが
私淑、尊敬する蕪村の画を現代によみがえらせたような絵、見返し、箱、素晴らしい
です。よほど湯川さん、気に入ったのか、普段本のことなど関係ない、老松町の
ホルンコーヒー店のお客さんまで、勧めていました。ママさんもも買ったはずです。」

 加藤一雄さんのことは、書物関係のブログでよく名前をおみかけするのですが、
古い話になります。小生が学生のころに、この方の講義を受講していたことがあるように
思います。なにせ、文学部でしてほとんどレポートで単位はいただけるというような考えの
なめた学生でありましたから、40年近くもたって、名前をひんぱんにみることになるとは
思ってもおりませんでした。何の講義であったのか、日本の絵画史かなにかではなかったで
しょうか。
 最近に加藤一雄さん名前を見たりするのは、山本善行さんの書いたもののなかでです。
たとえば「関西赤貧古本道」には、次のようにありました。

「 加藤一雄は『京都画壇周辺』(昭和59年、用美社)という著作集があるにも
かかわらず、一般にはあまり知られていない。彼は知る人ぞ知る美術評論家だった。
小説好きの私は『無名の南画家』『蘆刈』(昭和51年、人文書院)という優れた
小説を読み、これほどの書き手を今まで知らずにいたのかと、自分の迂闊なアンテナを
恥じた。・・・
『無名の南画家』は昭和22年に日本美術社からでたのが最初で、そのあと昭和45年には、
三彩社から再刊され、平成になってからは、湯川書房が百部限定ではあるが、戸田勝久
 版画入りの美しい本を出しているのだ。
  『無名の南画家』は、雑誌『南画鑑賞』に連載されたのだが、富士正晴はその雑誌を
 切り取り、一本に綴じ、繰り返し読んだという。読むたびに頭の中がすっきりした、と
 書いているが、本当に愛読したひとのことばだと感心した。
  わたしが読んでも、まさしきそのような小説であった。」 

 湯川の「無名の南画家」はちょっと手が出そうにありませんが、これを機会に、この本も
探してみることにいたしましょう。