新潟つながり

 本日手にしている本は、新潟つながりによるものです。
とはいっても旧制新潟高校の縁であります。旧制新潟高校といえば、丸谷才一さんが
有名でありまして、その著作のなかにも登場する植村清二さんが、本日手にしている
本の著者であります。

 旧制新潟高校で、丸谷才一さんのまわりにいた人といえば、次のような人が思い
浮かびますが、こうした人たちは植村清二さんの教えを受けていたのでありましょう。
 綱淵謙錠(小説家) 百目鬼恭三郎(文芸評論家) 
 野坂昭如(小説家) 丸谷才一(小説家)
 この文庫本は、そうしたつながりのなかで刊行されたものです。
 これの解説は、綱淵謙錠さんであります。
「まず、プライベートなことから書かせていただこう。
 昭和47年7月のある日、たまたまその年の上期の直木三十五賞を与えられたわたくし
は、その受賞作品の単行本を持って、本書の著者である植村清二氏宅にご挨拶にうか
がった。当時わたくしは70日におよぶ病院生活から退院したばかりで、人と長時間の
対話をする気力がなかったので、そのときは玄関先で失礼して帰ってきたのであるが、
わたくしが植村氏宅を訪れた理由は二つあった。
 一つは植村氏が旧制新潟高等学校で東洋史西洋史を教わったわたくしの恩師で
あったことである。(したがってわくしは、以下植村先生と書かせていただかないと、
筆が落ち着かない。)
 もうひとつは、植村先生がその賞に冠せられた直木三十五のご令弟にあたられたか
らである。・・・
 わたくしが受賞後なんとなく『ご挨拶に伺わねば』と思ったのは、先生の楽恩と
直木三十五の文恩(?)との微妙な重なり合い、いうならば歴史と文芸の間の、
なんともいえぬ因縁話めいた感動を表現したかったからである。」
 最近は読まれているのかどうかわかりませんが、綱淵謙錠さんは、中央公論社
編集者でありましたが、46歳の時に、はじめて原稿料を予定した作品を書き、その
作品で直木賞を受けたのでありました。