しばらくは積読か

 先日に辻原登さんの小説新刊がでていることを知りました。7月にはでて

いたようでありますので、ずいぶんと当方のアンテナは感度が悪いことです。

日経に連載していたようですが、そのことも知りませんでした。辻原さんの

小説は、このところ新刊がでるたびに図書館から借りたりして読んでいるの

ですが、最近はノワール系のものが多かったりして、もちょっと違ったものを

読みたいものと思っている時に、今回の新作です。

 先日に大型店にある書店で新刊のチェックをしていましたら、辻原さんのとこ

にはなくて、これは在庫していないかと残念に思ったのですが、ひょっとしてと

思い時代小説のところを見てみましたら、そこに「陥穽 陸奥宗光の青春」の

背表紙がありました。そうか、この店では時代小説の分類になるのかと思いな

がら、手にとってみることにです。

 「陸奥宗光の青春」とありますが、実在の人物を取り上げて新聞小説という

ことは、「陸奥宗光」は辻原さんと同郷であるのかと思ったのですが、これは正解

でした。

 辻原さんの「許されざる者」も、紀州の実在の人物をモデルにした作品であり

ましたが、その人は大逆事件に関わったとなるのですが、陸奥宗光さんは反逆

者ではなかったでありましょう。

 この小説の序には、次のようにありです。

「元来、紀州人は都では評判が悪かった。日に焼けた長い顔、とんがった頬骨、

抜け目のない面構えなどは紀州出身者の特徴だが、気短でせっかちな者が

多く、傲岸不遜、狷介の性などといった形容が並ぶ。『御伽草子』の中に、道中

で、向こうからくるのが紀州の人間と分かれば、脇に寄って目を伏せて通り過ぎ

よ、とある。」

 都で評判が悪い紀州人というのをみましたら、政権党のボスのことを思い

浮かべましたが、そのひとは抜け目のない面構えではありましたが、長い顔

の人ではなかったよなです。

 たまたま、この本を手にしていて、最後のほうのページを開いてましたら、

そこにアーネスト・サトウの日記がひかれていました。1920年2月20日のもの。

「今日、トルストイの『戦争と平和』を読了、ずいぶんながい時間がかかった。」

サトウはこの時、72歳で、ロシア語を勉強していて、原書で読んだのだそうです。

 当方とほとんど年齢の変わらない時に、サトウは原書で「戦争と平和」を読了

していたと知って、現在「戦争と平和」を新潮文庫で読みすすめている当方は、

これは「戦争と平和」を先に読んでしまわなくてはいけないなと思ったのです。

 ということで、「陥穽 陸奥宗光の青春」はすこしの間、積読になりです。