4、5日もあれば読むことができるだろうと思っていた梶よう子さんの「空を
駆ける」でありますが、思わぬ苦戦(?)でありまして、結局は二週間近くもかか
りまして、やっとこさで最後のページにたどりつきました。それでいて読みが雑な
のですから、まったくとほほでありますが、若松賤子さんをモデルにした作品を
読むことができてよかったことです。
ずいぶんと前に確保した山口玲子さんの「とくと我を見たまえ」もこれを機に
なかをのぞいてみることにしましょう。梶さんの小説でも最終章のタイトルは
「わが心をとくと見給え」でありましたです。
この印象に残るフレーズは、若松賤子さんの英語で書かれた詩にあったもの
だそうです。
そう思って山口玲子さんの本を開いてみましたら、小説の書き始めのところに
英語詩が掲載されていまして、その譯がついていましたです。「とくに我を見給
え」は、これの書名となったことで、知られるようになったのですね。
梶さんは1961年生まれとあります。一方で山口さんは1934年生まれで
ありますから、親子ほどの年の差で、発表された時代とスタイルが違うことも
ありまして、読み比べが楽しそうであります。
それにしても、山口さんが「その代表作も滅多に読まれず、賤子の名を知る人
も少ない」と書いているのですが、それから40年も経過して、このような小説
がでたことを知って山口さんは喜ばれたことでありましょう。