軽井沢も暑いのかな

 ここ何日か最低気温が20度を上回っていまして、このようなことは初めてで

あります。涼しさが売り物の当地でありますが、今年は軽井沢よりも暑くなっ

ていそうです。

 とはいってもオリンピックの競技が行われている近くのまちよりは5度以上は

気温が低いようです。盛夏の東京でマラソン競技とは何を考えているのかという

ことで、すずしい北海道のまちで開催することにしたというのに、なんという

皮肉でありますか、いつもの東京よりも暑いくらいでして、選手は大丈夫である

のか。そうこういっていても、あと何日かで前半の大会はおしまいで、このあと

もう一つの大会が待っていますが、どうなりますでしょうね。

 宇能鴻一郎さんの小説をちびちびと読んでいるのですが、この方と図書館とは

相性がよろしくないようでありまして、この町の図書館の蔵書検索で宇能さんの

名前を打ち込みましたら、アンソロジーにはいっている作品がヒットしましたが、

あとはまるでなしで、別名で書かれたミステリ作品がいくつかありました。

同じような色合いの作品を残していても、谷崎は図書館蔵書で、宇能さんはだめ

でありますか。

 宇能さんの著作で、中公文庫に入っている「味な旅 舌の旅」を入手すること

ができました。今でありましたら、まだ安価で販売されていますが、これも間も

なく高値になるのでありましょう。あまり煽らないほうがよろしいですが、新潮

文庫を買って驚いた人は、たぶん次にこれにいくのでしょう。

「味な旅 舌の旅」は交通公社から刊行された「味覚風土記」とあります。

目次をみて北海道のものはないのかと思いましたら、巻頭におかれている「千石

漁場・名残の浜鍋」というのが小樽を訪れるものでありました。

 この小樽編を読んでみますと、宇能さんがあまりにもまともなインテリである

ことに驚いてしまうことです。すくなくとも、この小樽編にはエロもマゾもない

のですからね。

「日本人が、合理的な船を作れなかったことを、人はよく幕府の鎖国のせいにする

が、ぼくはむしろ、国民性の問題だと思う。・・北海道の海辺にうつっても、『海

を見晴らす座敷で暮したい』といった、内地の生活感情から抜けきれない、合理的

精神を重んぜず、勇気を自虐的な形でしか表現できない、日本人気質のせいである。

これは言うまでもなく、合理的勇気がもっとも必要とされる海上の生活に、およそ

反対の性格なのだ。」

 このくだりの前には、北欧の漁家の船や住宅のことが記されていて、それと比し

て、日本人気質が話題になるのですが、そのとこでは「囲炉裏で体を乾かしたあと

はお互いの体温で寒さをしのぐだけだったヤン衆の生活環境は、あまりにみじめで

ある。」とありまして、「内地の生活環境から抜けきれない」網元・親方とヤン衆

のみじめな生活のコントラストに思いいたるのでありました。