風雨すこし強し

 この時期は台風が発生しやすいのでありました。今年はいまのところ台風の

襲来はないのでありますが、北海道で一番有名な台風は9月の洞爺丸を沈没さ

せたものでありました。昭和29年の9月26日でしょうか。当方の記憶で

一番古いものは、この台風で自宅裏にある小さな物置の屋根がとんだというも

のですが、その時三歳半くらいでした。

 昨晩から本日の午前にかけてけっこうな雨量とすこしの風でミニ嵐の雰囲気

でした。すでに盛りを過ぎたバラの花が、バラバラと落ちまして、地面が乾き

ましたら、それの始末をしなくてはいけませんです。

 外出から戻りましたら、このところ楽しみにしています新潮社「波」10月号

が届いておりました。まずは編集後記を見てから、今月の目次に目を通すことに

です。

 目次で目をひいたのは、なんといっても宇能鴻一郎さんでありまして、特別

エッセイという扱いで、「入院すると背が高くなる」というタイトルの文章が

掲載されておりました。 

 宇能鴻一郎さんは1934年生まれとありますので、御年87歳でありますか。

ほんとに若々しい文章でありまして、その昔にたくさんの官能小説の語り口調で

鍛えられたからでありましょうか。

 今回のエッセイの書き出しは、次のようになりです。

「七月半ば、横行結腸ガンとかで二週間入院した。手術そのものは痛くない。

腰椎麻酔も腕の採血より痛くない。尿管挿入は親しい編集者が苦痛をうったえて

いただ、なんということもなかった。こちらの太さによるのかも。自慢している

のではないよ。」

 87歳でありますよ。当方の父は15年も前に86歳でなくなったのですが、

こんなポップさは持ち合わせていなかったよな。当方の友人たちも病気だとか、

老化の悩みを伝えて来る人はいるけども、「こちらの太さに」なんて書いてくる

のはいないな。

 それにしても、このエッセイは最近にでた宇能さんの「姫君を喰う話」が好評

だからこそ実現したものと思われ、なによりもご本人が喜んでいて、ごきげんな

様子が伝わってきて、この本を新潮文庫にいれた編集者さんはおおいに褒められ

ていいですね。

 宇能さんは、次のように書いています。

「退院してきたら新しい文庫本がとどいた。

 うれしい。何しろ芥川賞の『鯨神』は前の文庫から四十年たっている。内容も

徹底的な校正を経て満足すべき決定稿となった。」

 この文庫本に収録の作品のうち一つはまだ読んでいないのです。もったいなく

てと思っているうちに、あの本はどこに押し込んであるのかな。