忘れていたわけでは

 しばらく手にしていなかった李恢成さんの「百年の旅人たち」を、久しぶりに

手にして、読むことになりです。この本のことを最初に話題にしているのは3月

24日ですから、それから二ヶ月が経過となりました。文庫本で700ページほ

どですから、一日15ページほど読めば、50日ほどで読み終えてしまうのです

が、途中で移動のときに持参するカバンのなかに入れてはいたものの、なか

なか読もうということにならず、やっと500ページをこえたところです。

 この作品は夢中になって、一気に読み進めるというようなものではないこと

でありますね。

百年の旅人たち (新潮文庫)

百年の旅人たち (新潮文庫)

 

  映画でいいますと「ロードムービー」という趣きでありまして、戦争前に朝鮮

半島から日本を通過して樺太へとわたって暮らしていた人々が、戦争が終わっ

て、樺太に居続けることが難しくなり、朝鮮半島へと戻ろうという旅行となりま

す。樺太から函館施設に引き上げて、そこから列車で九州の佐世保の収容所へ

と向かうことになりです。

 佐世保からは朝鮮半島に戻るつもりでいるのですが、半島を二分してにらみ

あいが続いている状況となっています。

それで、日本国内にとどまるのか、それとも半島に渡るのかということで、家族

の間で話し合いがなされていますが、さてどうなるのでありましょう。

「(収容所の)総務課に出向いていった彼らは引揚船が八月九日に出航すること

に決まったとの通告を受けた。彼らは緊張した。四日後には日本wお出発するの

だ。南朝鮮コレラが急速に収束していったのは不幸中の幸いであったが、

すでに一行の中では帰国をめぐって対応が割れていた。今回の配船で帰国する

ことを決めている家庭と日本にしばらく残留しようとする家庭の二つに分かれた

のだった。」

 これは1947年8月のことでありまして、この段階ではまだ朝鮮半島には独立

国家はなかったのでありますね。