せっかく小説を読むのでしたら、楽しく読みたいものですが、これが仕事
でしたらとっても楽しんでなんかいられないでありましょう。
仕事で小説を読む、見るとなりましたら、これは編集者とか校正者さんが
そうでありましょう。そんなことを思ったのは、本日に読んでいた小説のあと
がきを目にしたからであります。
作品は金石範さんの「地底の太陽」集英社 2006年であります。
今年は岩波書店から「海の底から」が刊行されて、これは「火山島」の続々編
にあたるとありましたので、こちらを読んだあとに、それの前段を描いた「地
底の太陽」という作品を読むことにしたわけです。
金石範さんは、ほとんど一つのことにずっとこだわっての作家生活でありま
して、それは朝鮮半島はどうしてひとつの国家にまとまれないのかという課題
であります。
それにしても、朝鮮半島の戦前の統治下におけるコラボ問題というのは、現
在にもずっと尾を引いていることでありまして、大韓民国は朝鮮戦争後には
米国軍に支援された李承晩が政権を担うのですが、これが民族主義の人から
いわせればコラボ政権となるのでありまして、それに対する反発が民主化運動
ということで、何十年も続いていたわけです。
ずっと大韓民国は軍事政権でありまして、現在の国の在り方は、当時を知る
ものからすれば、信じられないことであります。そうしたなかで、コラボ政権
への批判が高まるのは当然(?)でありまして、協力者たちは鋭い批判を浴び
ることになっていますね。
それはさて、「地底の太陽」の作者あとがきから引用です。
「編集担当者の苦労は改めていう必要がないが、小説にあまりなじまない『あ
とがき』を書くこの際に、一言記しておきたい。
単行本担当者の高橋至氏とは付き合いが長い。もう三十年以上になると思う。
『地底の太陽』は、高橋氏の協力があって出版されたものである。・・
併せて、『火山島』全七巻を読破し、小説中の日時や事項の間違い等々、いろ
いろとチェックしながら校正された原健一氏、同じく全七巻を読み、この作品
との細部の違いを指摘し、また登場人物表を作られた原田拓氏」
小説のあとがきというのは、あまりないと思われますが、そこに校正を担当
された人の名前があがるのはめったにないのではないかな。
「地底の太陽」というのが「火山島」の続編というものであれば、当然、その
前作とのあいだで整合をとらなくてはいけないわけですが、作者、編集者、校正
者のそれぞれが全七巻を読み返し、メモしながら作業をすすめるというのが、
仕事とはいえ、ものすごく大変なことでありまして、これは書くのも、作るのも
力技となります。