古い雑誌の増刊号を手にしているうちに月がかわりました。月末から出版社のPR誌
が届きはじめたのですが、なかなか目を通すこともできずで、各社の新刊広告をのぞ
くにとまっていました。
「ちくま」「図書」「一冊の本」「波」「みすず」とあって、これらの10月号で目に
ついたことといえば、8月にあったオリンピックと天皇の生前退位でありましょうか。
オリンピックについては、高村薫さんが「図書」の「作家的覚書お祭りのあと」で、
つぎのように書いています。
「オリンピックを楽しむのはいいが、所詮スポーツではないか。・・・全国紙や公共
放送が突然オリンピック一色になってしまうのが自然の成り行きであるはずもない。
これはいくらかは大衆の気分と政治の思惑を反映した結果であって、例年のように
国民が過去の戦争を振り返って平和への思いを新たにするより、オリンピックに沸い
てくれていたほうが、政権にとっては内外のきな臭い状況から国民の眼をそらせると
いう意味で、都合がよいということかもしれない。」
オリンピックについて違和感を表明しているのは「ちくま」「世の中ラボ」の斎藤
美奈子さんも同じであります。書き出しは、次のようになっています。
「リオデジャネイロ五輪も終わり、『次はいよいよ二〇二〇年の東京だ』みたいな空
気がただよっている。八月二一日のリオ五輪の閉会式にはマリオに扮装した安倍首相
まで登場し、心底うんざりだったが、これに喜んでいる人もいるわけで。」
斎藤美奈子さんは、いまからでも東京オリンピックは返上すればよろしいという考え
方の持ち主であります。斎藤さんは、それにしても最近は「東京五輪反対論」はめった
に見かけなくなったと記しています。ということで、今月の結語は、次のようになりま
す。
「五輪をめぐる状況は、すでに言論統制も生んでいる。・・当時はまさか四大全国紙
(朝日、読売、毎日、日経)すべてが五輪の協賛企業になるとは思ってもいなかった、
と。そうないのだ。いまやこの国のメジャーなメディアはみんな東京五輪の応援団。
やり方を批判しても、やるなとはいわない。これを大政翼賛といわずして。」
新聞各紙は経営がよろしくないので、ついついそういうことになってしまうので
ありましょうか。
天皇の生前退位については、高村さんのコラムにまずはありました。