年のはじめに

 本日の新聞には出版社の広告がたくさん掲載されていて、これを見るのが楽しみで
あります。その昔でありましたら、その年の新しい企画などが予告されたのでありま
すが、今年もそうような広告は岩波くらいでありまして、当方のような古い人間には
ちょっと拍子抜けです。
 新聞に全面広告をだすのは、大きな出版社に限られていますが、一番の気がかりな
のは本が売れなくなっていて、市場が縮小傾向にあるということではないでしょうか。
もっとも、こんなことを元旦の新聞広告にのせてもしょうがないことです。
 古い人間である当方の目を惹いたものといえば、まずは集英社の広告となります。
そこには、大きな文字で「読書は、平和を守る。」とありました。コピー文の最後に
は、「集英社はこれからも、言葉のチカラを信じ続けます。」とあります。
どうして片かなで「チカラ」と表記するのかと思ってしまいますが、このコピー文に
ある片かな表記は、ほかに「インターネット」とあるだけで、インターネットの影響
力に対抗する「言葉のチカラ」ということでしょうか。
 コピー文にそえてカント「永遠平和のために」(池内紀訳)の一節が引用されて
いました。
「永遠平和は空虚な理念ではなく、われわれに課せられた使命である。」
 そういえば、集英社は「コレクション 戦争と文学 」というのを創業85年記念で刊
行した版元でありました。今年は、この広告の延長線で、どのような企画をだして
くれるのでありましょう。楽しみに待つことにいたします。