「銀花」310円 4

 「銀花」150号で取り上げられた室蘭の図書館長だった山下敏明さんの「本の話」であ
ります。正・続と二冊からなりますが、正編の目次を目にしただけでも相当な人である
ことがわかります。
 大学の図書館職員といえば、大学の先生よりも学識のある人がいたりすることは、よく
知られています。(そういえば、山村修さん、気谷誠さんはともに大学図書館の司書で
ありましたし、吉田八岑(一穂さんの息子さん)もまた大学図書館司書でありました。)
 蔵書票制作の指導を行うくらいでありますから、山下さんにとって蔵書票は、たいへん
身近なものでありました。「本の話」には、「楽しい書票の文化」というコラムがあり
ます。
「本を読み終えるつど、私は見返し(表紙裏)に『エクスリブリス』を貼ります。読者
には耳なれぬかも知れぬこの言葉は『広辞苑』には『蔵書票、書票』とでています。
これでは簡略に過ぎるので『カラー・アンカー英語大辞典』をもみると、『書物に貼り
付けて、その所有者を示すために印刷した小さい紙片。EXLIBRISはラテン語でfrom the
books(of) (・・・の本から)の意。英米では既製のさまざまな蔵書票が売られている
が、自分で特別なデザインのものを印刷させることも多い』とあって、これで大凡の
輪郭がつかめるでしょう。」
 山下さんがどのような蔵書票を使っておられるのかは、「本の話」をぱらぱらとみた
だけではわかりませんでした。なんとなく、自作のものを使っているようにも思えます。
 そういえば、先日に入手した「銀花」147号には、「ヲトメたちの蔵書票」というとり
あげがありました。田中栞さんが紹介するもので「本好きでものづくりの大好きな女性
たちがのびやかに、蔵書票作りの輪をひろげている。」と記されています。
この文章には「本来は蔵書に貼るべきものだが、愛好者たちは”紙の宝石”と呼んで
珍重し、マニアどうしで交換しては蒐集するのが年配男性の密かな趣味となっている。
彼らは単なる版画コレクションとして蔵書票を集め、本にも貼らないというケースも
少なくない。蔵書票の作り手たる版画家もこれまで、男性が多かった。
 ところがここ数年、二、三十代の若い女性たちが使うことを前提に、手近な道具と
自由な発想でおしゃれな蔵書票を手作りしている。」とあります。
この田中さんが紹介する方々は、蔵書票部というグループを作り、蔵書票の交換などを
継続しているそうです。もっぱらおやじたちのフィールドであった古本の世界に女性
たちがはいってきたのは、このころからでありましたか。