旅の空から 2

 この時期の関西は紅葉が見ごろとなっていまして、紅葉の名所はどこも人で
いっぱいであります。本日は、久しぶりに単独行動が可能となりましたので、
これまでなかなかいくことができなかった茨木市中央図書館を訪ねました。

 もちろん、お目当ては「富士正晴記念館」であります。
富士正晴さんのように地味で、期待される人間像からほど遠い存在である作家を
記念する施設をつくるというのは、そのときの市長さんが、富士さんのことを
よくわかっていなく、地元の有名人であるからということでゴーサインを出した
か、それとも文芸振興を図るということから、後進の育成に務め、独自の作品を
残したことを、よーく知っていて許可したものでしょうか。
 本日に茨木市をめぐっていましたら、川端康成文学館というのも眼にはいり
まして、この箱物を見る限りにおいて、茨木市は文芸振興に熱心な自治体の
ようにも見えることです。

 収蔵庫も含めて220平方メートルというこじんまりとしたスペースですが、
とにかく富士正晴をテーマに、こうした場所ができたことが喜ばしいことです。
 この時期は、特別展として「庄野潤三富士正晴展 2」を開催中でありま
す。(会場には、ほかに客がなく、ほぼ一人で展示を見物することができま
した。まことに贅沢な時間であります。)
 庄野潤三さんからのはがきがたくさん展示されていたのですが、お若いとき
から年を経るにしたがっての字の変化を面白く拝見しました。なるほど年長の
文学仲間に対しては、このようにはがきを書くのかというのが参考になりまし
た。
 ヴァイキングでの庄野潤三さんの名前は「サロイヤン」となりますが、これ
は、「わが名はアラム」の作家、ウィリアム・サローヤンによっています。
サローヤンというと、当方が高校生のころに角川文庫で購入して愛読した作家
ですが、庄野さんだけでなく、富士さんもサローヤンのファンであったという
ことを今回知りました。
 サローヤンが最近読まれているのかどうかわかりませんが、当方の好きな
作家さんは、サローヤンを好んでいるようであります。富士正晴さんは、どの
くらい英語ができるのかわかりませんが、翻訳で読んだのでしょうか。
 角川文庫の「わが名はアラム」の訳者は三浦朱門さんでありまして、三浦
さんは、旧制高知高校出身で、阪田寛夫さんと一緒というつながりです。
ヴァイキング」のサローヤンに、このつながりは関係しているのでしょうか。