本日の本

 本日は車で外出することになりましたので、あれこれとたまっていた用足しをして
きました。
 昨日に記しました「本の雑誌」3月号を、書店に受け取りにいきました。これをパラ
パラとページをめくっていましたら、昨日の拙ブログのなかで、不思議なシンクロを
していました。
 それは庄野潤三さんの本「エイヴォン記」のところで紹介をしている小説の作者に
関してであります。昨日に名前をだした小説集は「ブロードウェイの天使」というも
のとなります。

ブロードウェイの天使 (新潮文庫)

ブロードウェイの天使 (新潮文庫)

 庄野潤三さんの小説「ブッチの子守唄」の書き出しは、次のようになります。
「本棚の前に入りきらない本が積み上げてある。その中に文庫本ばかり積み重ねた山
がいくつか出来ていて、読みたい本があるときは、その山を崩さないように気を附け
ながら探しだす。
 ディモン・ラニアンの短篇集「ブロードウェイの天使」(新潮文庫加島祥造訳)
は、五つほどある文庫本の山のうち、いちばん背の高い山の、山の頂に近いあたりに
載っかっているから、すぐ分る。」
 ディモン・ラニアンの小説を購入したのは、この作家の作品を元にする宝塚の舞台
を鑑賞したからであります。その作品は「ガイズ&ドールズ」で、この作品はディモン
ラニアンの短編「ミス・サラ・ブラウンのロマンス」をミュージカル仕立てにしたもの
なのだそうです。
 もちろん、当方はミュージカルの「ガイズ&ドールズ」も、ディモン・ラニアンもと
もに知りませんでした。
庄野潤三さんは、「ガイズ&ドールズ」がディモン・ラニアンの作品を元にしている
ことは知らないのですが、ディモン・ラニアンという作家のことは知っていたのだそう
です。
 これがどうしてかでありますが、小説では次のように書かれています。
「 ディモン・ラニアンは、戦後に亡くなった私の父が好きな作家であった。戦争が
終わった翌年くらいであったか、父が、
『ディモン・ラニアンというのは面白い」
と何度か私にいった。
 進駐軍と一しょに入って来たペイパーバック版でラニアンの短篇集を手に入れて読ん
だらしい。それが何という題名の短篇集であったのかも覚えていない。父からその本を
借りて読んでみようともしなかった。父にしてみれば、張り合いの無いことであった
ろう。」
 庄野潤三さんの父上、貞一(1887-1950)さんは帝塚山学院創立者でありまして、
戦争が終わった翌年といえば60歳くらいであったのでしょうか。一方で潤三さんは、
25歳でしょうか。
 めぐりめぐって、このときから40年もたってから、庄野潤三さんは宝塚の舞台を見て
から、小説を読んで、父上のことを偲ぶことになるのでありました。
 この小説では、「ブロードウェイの天使」の翻訳者である加島祥造さんの文庫本解説
から引用の部分がありました。
加島さんといえば、最近なくなったのですが、最晩年には山のなかで仙人のような暮ら
し方をしていて、著書がベストセラーとなり、暮らしぶりがTVで紹介されていました。
 「本の雑誌」3月号では、ディモン・ラニアンの作品と訳者 加島祥造さんの業績に
言及されているコラムがありました。