小沢信男著作 108

 名古屋豆本「東京百景」は、本文が78ページとなります。豆本でありますので、サ
イズは小さいのですが、俳句に、詩に散文と中身は盛りだくさんです。版元が楽しんで
作っているだけ好ましく感じます。
 これから4年後となる89年6月に河出書房から「東京百景」は刊行されるのですが、
これのあとがきで小沢さんは、この本のなりたちを、次のように記しています。
「 2の章は、千葉県木更津の友人庄司肇氏の個人誌『きゃらばん』
(1983年5月創刊)に、そのころひねりはじめた俳句を両三度載せていただいたのが事
の起こりで、すると名古屋豆本の版元の未知の大先輩亀山巌氏からお声がかかり、
思いもかけず『句集 東京百景』が豆本のお仲間入りをする光栄に浴しました。1985年
八月開版の名古屋豆本第94冊として。
 こういうことがあるから、つい生きているのがやめられない気分になります。根が
楽天的なのでしょう。<百景>と称しながら、じつは豆本の中身は六十句でした。・・
 本書は、この豆本句集を核として、四つの章に増殖したものと申せます。そこで、この
さい亀山巌氏にご無心して、各章の扉にカット、写真を頂戴しました。」
 89年の新刊当時に、この本を手にしたときは、それまでに発表していた短編小説が
まとめて読めるようになったと思ったのですが、いまとなっては、小沢さんの俳句が広く
世にでるきっかけとなったほうの意味合いが大きかったようです。