古本屋のおやぢ 5

 関口良雄さんの「昔日の客」の略歴をみましたら、1970(昭和45)年7月のところ
に、「尾崎一雄上林暁木山捷平、山高のぼる、関口銀杏子の五人句集『群島』を
刊行とあります。」
 この「群島」のあとがきは、上林暁さんが書いていて、これは全集19巻に収録されて
います。第19巻は落ち穂拾いのような巻でありますが、「関口良雄」さんと関わりの
ある文章をたくさん見いだすことができます。
 「群島」あとがきは、次のような書き出しです。(この文章には「昭和45年3月18日
彼岸に入る日」と付されています。)
「 一昨年の秋、関口君と山高君を語らって、『三人句集』をだすことになった。
一人あて五十句づつにして、ポツポツ作りためてゐた。
 そのうち、尾崎さんが伝へ聞いて、おれも仲間に入れてくれと言った。それで『四人
句集』にすることにした。
 その後、木山君の未亡人が伝へ聞いて、『木山も生きてゐたらなあ』と嘆いたさうで
ある。それで『五人句集』にすることにした。」
 文中の「山高君」は、「昔日の客」に版画を寄せている版画家さんです。
 このあとがきにある関口さんに関するところからの引用です。
「 関口君は、東京タイムスの加藤秋邨の選に投稿して、優秀な成績を収めてゐる。
 秋邨さんを尊敬してゐるし、また秋邨さんから目をかけられてゐる。一時は私のところ
 へ、俳句を書いたハガキを矢つぎ早にくれたものであった。作句に熱心だ。
  山高君は一番俳句の正道を歩んでゐる人である。私はその句集の下書きを読んだ時、
 そこことごとくが傑作であり、素人ばなれしてゐることに驚いた。俳句の勉強に年季を
 かけてゐる人である。・・・・
  排列は年長順にした。それが偶然、五十音順に一致した。
  題字は、尾崎さんの手をわづらはした。『群島』といふ題名は、山高君が考へたもの
 である。五人の一人一人が島を持ち寄って群島になってゐるからだ。装幀、造本はすべ
 て山高君が手がけた。」
 
 「昔日の客」のあとがきには関口さんが「山高さんが(編集を)引き受けて下さった
からには安心だ」という記述がみられますが、もともとは編集者であったとあります。
編集者のかたわら版画をやっていらしたが、早期に会社をやめて版画で一本でいくこと
になったようです。1978(昭和53)年退社とありますので、ちょうど「昔日の客」元版
の編集作業と退社準備は並行していたようであります。
 山高さんの作品は、次のところで見ることができました。
http://www.kasagi-garo.com/museum/yamataka.html