古本屋のおやぢ 4

 購入してから積読状態が続いていました「上林暁全集」ですが、関口良雄さんの足跡を
たどるためにも、この全集はためになります。全集というのは、すでに単行本となって
刊行された小説等を読むよりも、未発表の日記などに目を通すほうが楽しいかもしれませ
んです。
 本日に開いているのは、全集第19巻にある1965(昭和40)年1月の日記の部分です。
「 1月21日 木曜日 晴 
  古本屋 関口くんに独歩の『愛弟通信』を頼む。前に倒れたときも、蔵書を見てつま
 らなく思ったものだが、元気がでるにしたがって本が読みたくなる。欲しくなる、買ひ
 たくなる。今もその調子であるから元気がでたのであらう。
  1月22日 金曜日 曇
  関口君から電話あり、尾崎一雄原作『口の滑り』夜9時50分からテレビ放送される
 由。関口君がモデルである。・・・
  夜一寸起きる。『口の滑り』を見る。面白し。関口君が結婚の挨拶をするところ、
 奥さんが太ってゐるところ等が、特に面白い。
  2月3日 水曜日 晴
  もと角川書店にゐた山本容朗君来る。週刊文春の記事をとりに来たのである。暫く
 話す。
  つづいて関口君受賞(読売文学賞)の祝ひに来てくれる。・・・同時に筑摩書房
 熊木君来る。全集の原稿について話す。明日原稿を渡すことにする。」
 
 「俄か川崎ファン」様に、ご教示いただいたとおりでありました。筑摩の全集担当編集
 者は熊木さんとありました。
  上林暁全集の刊行は、以下のとおりです。
  上林暁全集 全15巻 1966(昭和41)年1月〜1967(昭和42)年8月

  増補改訂 上林暁全集全17巻 1977(昭和52)年6月刊行開始、1978(昭和53)
 年7月筑摩書房会社更生法申請のため6月刊の「第14巻」で中絶。1980(昭和55)年
 4月、第15巻から刊行再開(同年12月完結)。増補改訂版は、もともと17巻で刊行
 開始したのですが、その後も上林さんが活発な活動を続けたことにより、最終的に
 は全19巻となりました。
  上林暁さんは、これの完結を見ることなく、1980(昭和55)年8月28日にお亡く
 なりになりました。

  増補決定版 上林暁全集 全19巻 2000(平成12)年6月刊行開始。前回の増補
 改訂版に小説3編と戯曲3編ほかを増補したもの。筑摩書房創業60周年記念復刊です。
    
  以下に掲げるのは、1977(昭和52)年の全集内容見本となります。