パーティなどであいさつを聞く機会はたいへん多いのですが、上手なあいさつというの
にはめったに出会わないものです。ほんとうに「挨拶は難しい」であります。
仕事で組織トップが読むあいさつの下書きを作成することがありましたが、その場の
雰囲気がつかめていないなかで、書いたりするというのは、けっこうたいへんなことで
ありました。毎回同じ内容というのも芸がないしで、いろいろと苦労をするわりには、
聞いてもらうこともできないしであります。
当方の作成するのは下書きでありますから、トップが目を通してみて、これは使えない
となるとほとんど生かされることがないのでありました。
たまに、下書きがそのまま読まれて、その場の反応が聞こえてくることがありましたが、
そのようなわずかな反応でも励みになるのでした。
世には「あいさつ例文集」のようなものが出ているのですが、これは文字とおりの
紋切り型でありまして、ほとんど使うことはできずでありました。
あいさつ文を集めたものなどほとんどないのですが、例外的なものとして丸谷才一さんの
ものがあります。
本日手にしたものはシリーズの三冊目でありますが、このシリーズは次のものです。
- 作者: 丸谷才一
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辿ると挨拶は難しくて大変で一仕事となりますが、挨拶のベテランでいらっしゃる丸谷
さんにとっても、やはりたいへんなものなんでしょうか。」と尋ねています。
それにたいして丸谷さんは、「挨拶は大変だとも、むずかしいとも、一仕事だとも何と
も思わないで、ただ出ていって何かダラダラしゃべってみんなを困らせるという、そう
いう偉い人が多いでしょう。だから、そうじゃないんだよと、聴いているほうとして大変
だし、むずかしいし、一仕事なんだよと。・・社長とか大臣とか、そういう人たちは自分
のような偉い人がでていって話しをすれば、みんなが喜んで聴くのが当り前だという気持
ちがあるんじゃないかな。そうとは限らないんだということを僕は言いたいわけです。」
と答えています。
たまには、自分もあいさつをする羽目になるのですが、こういうのを目にしますと、
いろいろと思い当たることがあって、身につまされます。
丸谷さんのシリーズとなっているエッセイ集については、いつ頃からか新刊での購入は
よしているのですが、「あいさつ文集」のほうは、新刊で購入が続いているというのは、
それらが実用的でもあるからでありました。