本の探偵 4

 「本の探偵」というのは、赤木かん子さんがはじめたものです。ご自身が参加していた
児童文学の同人誌の別冊として出したものに、次のような「探偵案内」をのっけたのだ
そうです。
「 あなたが昔読んで好きだった本、なつかしい、だけど、本のタイトルや作者や
出版社がわからないので探しようがない。そういう本がありましたら、その本について
覚えていることをありったけ書いておくってください。
 もしかしたら、わかるかもしれません。・・・
 もちろん、わからないことの方が多いでしょうが、あたうかぎり、お探しいたします。
 必ず、返事はだしようにします。」
 この「案内」がマスコミの目にとまって、紹介されてからどどっと「依頼」のお手紙が
届くようになったそうです。
手紙には、依頼主の記憶に残っているかって読んだ作品の部分が記されているのですが、
それは、多くの人に読まれているとっても有名な作品であったりしたとのことです。
どうして、このように有名な作品のことが、何年もわからずにもんもんとしているのか
が、たいへん気になったとあります。
 いまでありましたら、このように有名な作品でありましたら、キーワード入力をして
パソコンで検索すれば、ある程度の確率でタイトルを知ることができるように思います。
とはいうものの、赤木さんが「探偵を開業」を志したのは、84年のことですから、この
時には、当然のこと、個人がコンピュータを活用する状況にはありませんでした。 
 それじゃ、赤木探偵事務所以外に相談できるところはなかったのかというのが、この本
の一番いいたいところかもしれません。
「 もしかして、もしかすると、ひょっとして日本のみなさんは図書館へ行けばそういう
ことはわかるんだって、夢にも思ってないんじゃないか、という恐ろしい考え、でもう
ひとつは、もしかしたらそもそも図書館なんて、はじめから近くにないんじゃないか、
というもっとおっそろしい考えで、両方とも、あたっているんじゃないか、と思うと
ぼうぜんとするね。」
 子ども頃に読んだ本で印象にのこっているものが、図書館と記憶で結びついているので
したら、図書館にいって聞くということがあったかもしれません。ところが、どうしてか
自宅にあったものを読んで、そのあとそれがなくなったりしていたら、その本のことを、
図書館に問い合わせようなんてことにはならないかもしれないな。
 もちろん、普通の書店にいって店員さんに聞いてもわかるとは思えないしね。