かけこみで図書館へ

 緊急事態宣言が全国に拡大するということで、当方の住む町の公共

施設は休みにはいることが決定です。この週末が終わればということで

図書館にあわてていって本を借りることとしました。

 今回の騒動でマスクを求めて販売店に並ぶことはなかったのですが、

図書館が5月連休明けまで閉まるとなると、ちょっと困りますので、その前

に借りておかなくてはです。

 ということで、借りた本についてであります。

芥川賞直木賞秘話

芥川賞直木賞秘話

  • 作者:高橋 一清
  • 発売日: 2020/01/08
  • メディア: 単行本
 

  元文藝春秋社の高橋さんによる、裏話であります。過去に編集者時代の

話を面白く読んだのですが、これは芥川、直木賞の事務局(日本文学振興会

をやっていたころの話。

 それは知っているなという話もすこしあるのですが、そういうこともあったのか

と思うこともありです。

 そうしたくだりの一つは、次のところ。

「平成8(1996)年春の人事異動で、文藝振興局で日本文学振興会の運営と

進行をするように言われたその時の社長の言葉は、『芥川賞』を立て直すよう

に』ということでした。芥川賞の受賞作品の発表される3月号、9月号の『文藝

春秋』が発売されると、何本も講義の電話が入って来て困っている、といいます。

そのほとんどが、『また面白くない作品に授賞させた。こんな作品読めない。

もう芥川賞を読まない』という購読者のお叱りの電話と言います。」

 これを受けて、この前の5年くらいは、そういわれても仕方がない作品が続い

ていたと書いています。それは選考委員の小説観にも関係があるのではという

ことで、当時の選者の名前を書いています。

大江健三郎、大庭みな子、黒井千次河野多恵子田久保英夫日野啓三

古井由吉丸谷才一三浦哲郎吉行淳之介のみなさんで、かっての文士た

ちとによる選考委員会の雰囲気とは違います。選考会に陪席していて感じる

のは、作品の印象批評というより、小説への論評、すなわち理屈が多いので

す。日頃書いておられる小説も、面白い筋のある小説というより、流行の文藝

理論や手法を取り入れた実験的な小説やこまやかに心理を描く小説が多い

といってもいいかと思います。」

 ということで、高橋さんが最初に手をつけた「芥川賞」改革は、選考委員の

入れ替えで、この時に石原慎太郎宮本輝さんだったとのことです。

外れたのはどなたであったのでしょう。今はこの賞に関してのいろんなサイト

がありますので、すぐわかることですが、石原さんが選者にはいって、すぐに

やめたのは大江健三郎で、それについで、大庭みな子、丸谷才一でありまし

た。高橋さんのターゲットはこのあたりであったのかな。

 文学振興ということからは、純文学好きを増やすような話題になるような

作品が望ましくて、あまり実験的なものは別な賞でということなのでしょうね。