本の探偵 3

 アーサー・ランサムさんのシリーズ全12巻は、「本の探偵」赤木かん子さんの一押しで
ありますが、これまでは品切れが続いておりました。岩波書店でシリーズででていた児童
書のほとんどは岩波少年文庫にはいったのですが、なかでは、このランサムさんのもの
だけが未収録で、ここまできていました。単行本でも入手も困難になっているし、日本の
古本屋で検索をかけても、なかなか揃えるのは大変になっているなと思って見ておりました。
 赤木さんが、このシリーズについて記しているくだりです。
「 初訳は1957年の『ツバメ号とアマゾン号』だと思う。そのあと全訳されて、今は全
部手に入ります。私の最愛の書!一年に一度は必ず読みかえす。特に私はディック・
カラムのファンであります。」
 この文章が書かれたのは85年のことでありますから、それから25年もたちますが、
やっとこのランサムシリーズが入手しやすい少年文庫化します。岩波書店「図書」7月号
の巻末広告をみますと、この文庫化は「岩波少年文庫創刊60年」の記念事業となるもの
のようです。少年文庫60年ということは、ほとんど当方と同年であります。
 少年文庫の古いものは、ダンボールのケースにはいったハードカバーのものでした。
いつ頃かソフトカバーになって、版型もすこし大きくなっています。当方の子どもの頃
はハードカバーが中心でしたが、良く手にするようになったのはソフトカバーになって
からでありました。特には「ドリトル先生シリーズ」が収録されたのは大歓迎で、これ
からは、じゅんぐりと文庫化されるのだなと思われましたのでね。
 それからでも、今回のランサムシリーズの文庫化までずいぶんと待つことになり
ましたが、どうもこれは改訳という事情があったようです。
 「図書」7月号の広告には、次のようにありです。
「 40年にわたって親しまれてきた冒険の物語。全12巻改訳、刊行開始!」
 訳者は神宮輝夫さんですが、最初の翻訳から50数年で、そろそろ80歳でありますの
で、なんとか間に合ったというところでしょうか。
今回の少年文庫化で、すこし残念なのは元版の各巻が二分冊となって全24冊となった
ことと、表紙のデザインが、かってはシンプルであったのに、今回の文庫カバーでは、
写真で見る限りすこしうるさく感じることでしょうか。
 かっての少年文庫には、「ガンバとカワウソの冒険」のようにずいぶんと大部でも
一冊ででたものがありました。今回の「創刊60年」企画にも「ぼんぼん」のように
500ページくらいで一冊のものがあるのですから、できれば元版の雰囲気を残して、
各巻一冊であればよかったのにです。(そんなに厚いと、最近のこどもは手にとって
くれないということでしょうか。それとも、一冊の単価を千円以下におさえるという
方針によるものでしょうか。)

ツバメ号とアマゾン号 (アーサー・ランサム全集 (1))

ツバメ号とアマゾン号 (アーサー・ランサム全集 (1))