最近の翻訳小説

 その昔は、翻訳小説というのはずいぶんと読まれていたように思います。
最近でもハリーポッターは大ベストセラーになったではないかといわれそうですが、
これはちょっと違いますね。
 当方が思いますのは、50年代から80年くらいにかけてたくさん翻訳された新しい
海外小説のことです。大手の出版社からは、いくつも翻訳小説のシリーズがでていま
した。
 たとえば、新潮社からはガルシア・マルケス百年の孤独」がはいったシリーズが
でていましたし、河出書房からは、「七人の使者」とか「ベルリンアレクサンダー
広場」、「A・O・ヴァルナブース全集」などがはいったモダンクラシックというシリーズと
J・ファウルズ「魔術師」がはいった「新しい海外小説」というシリーズが並行して刊行
されていました。
 そして白水社からはボルヘス「不死の人」やパヴェーゼの小説をおさめてシリーズが
でていました。白水社は、いまも同じ路線で継続していますが、新潮社はクレスト・
ブックスというシリーズに、河出書房は新しい小説のシリーズはなくなって、池澤夏樹
編集による文学全集が、海外シリーズのなごりを残しているように感じられます。
 それにしても、河出書房のものには、古本屋でとても値段が高くなっているものも
あることから、ここいらで小部数でも復刊してもらえるとありがたいです。
 当方が最近の翻訳小説に明るくないので、特に昔はよかったなんてことをいうのかも
しれません。しかし、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」という大傑作を、ほとんど
同時代の作品として72年くらいに読むことができたというのは、大変な幸運であったと
思います。
 最近の小説にも、それに匹敵するようなものがあるのでしょうか。
 

百年の孤独

百年の孤独