本が生まれるまで

 先日に「杉浦康平デザイン」を話題にしていたとき、築地書館からでた本のことに
触れました。築地書館の刊本はほとんど縁がないなと思っていましたら、次のものが
でてきました。

本が生まれるまで〈1994〉

本が生まれるまで〈1994〉


 みすず書房の編集責任者であった小尾俊人さんが、みすずをやめてはじめてだした
著書です。この本のあとがきには次のようにあります。
「 私はいわば偶然に出版者になった。場合によっては植字工になったかも知れず、
印刷工になったかも知れない。文字が好きだったからである。自分の職業と決めたから
には、それをできるだけ満足のゆくものにしようと思った。」
 1922年に長野県に生まれた小尾さんは、40年に出版業に入るのですが、この時、
まだ10代でありますから、出版に関するいろんなことを経験されたのでしょう。
最近の編集者といえば、大学をでてから出版社にはいって、それから編集一筋となるの
でしょうが、この時代には、まだこういう職人さんのような形ではいって、編集を
専門とするひともいたのですね。
 ちなみに最初にはいったのは「羽田書店」でありますが、ここは衆議院議員羽田孜
さんの父親の会社で、父親も当時は議員でありました。(岩波書店の番頭であった
小林勇」さんも、小僧さんとして会社にはいって、その後女婿となり、会社の中核と
なるのですが、長野は、さすがに人材が豊富であります。)