活字が輝いていた時代2

 デザイナーの杉浦康平さんは、「デザインをするためには、出版社とデザイナーの
協力が必要なのだが、マスプロだと、そのプロセスが欠落する。そこで中小出版社に
希望をつなぐほかないわけで、築地書館思潮社は印刷所と緊密な関係をもっているか
ら、造本にも本の内容が要請する造本の必然性を認識してもらいたいですね。」と
語っていますが、学術出版物の特殊なものについても、同じことがいえるようです。
日本で一番大きな印刷会社でできないことが、京都の小さな印刷所が可能とするという
ところにすきまを生きる企業の力があります。昨日に西夏文字の印刷などを依頼する
なんて学者は、日本では何人もいないのですから、活字をセットでそろえても、何年に
一度つかうことがあれば、まだよしで、ほとんど償却もできずに倉庫に保存となるので
しょうか。

 これが西夏文字となります。どこかで見たことがありそうな文字ですが、しかし
いわゆる漢字ではありません。このひとつ一つに意味があるということですが、
どのように発音して、どういう意味なのでしょうね。
 毎年、世界では言語がいくつか消えていくといわれています。日本国内でも
アイヌの人々の言葉は、ほとんど話すことができるひとがいなくなって、絶滅に
ひんしているといわれていますが、アイヌ民族の言語は文字をもたないので、記する
時には、カタカナとかをつかうわけですが、絶滅に瀕している言語で独自の文字を
有している言語というのはどのくらいあるのでしょう。
 昨日には「活字が消えた日」から引用したのですが、京都のことばで語っていた
のは、中西印刷の社長さんでありました。
「いくら学術出版の灯を守るといっても会社自体がなりたたんようになったのでは
おしまいや。」
 まったくそのとおりであります。