活字が輝いていた時代3

 昨日のページに掲載しました「活字が消えた日」の表紙カバーにあります写真は、
活字棚であるようです。この棚に鉛の活字が並んでいないというのが、活字がつか
われなくなったことを表しています。
 「活字が消えた日」の著者 中西秀彦さんは、大学をでてから会社勤めをして、
そのあとにお父さんが社長をしている「中西印刷」に入社するのですが、一番最初
に父親の社長からいわれたのは、「会社のことをひととおり覚えることであり」、
とりわけ「活版印刷の基礎中の基礎である文撰」をやってみることでありました。
「中西印刷の文撰場には、見渡すかぎりといっていいほど活字が並んでいた。書体と
しては明朝とゴシックぐらいしかないのだが、アルファベットと違って、漢字はとに
かく字数が多い。それも当用漢字さえそろっていればいいというレベルではない。
・・結果として『漢字の数×活字の大きさ×書体』というだけの数の活字が必要とな
るから、途方もない話である。』
 中西印刷の活字棚は、活字のならべかたがつぎのようになっていたとのことです。
「正面にはひらがながあった。そのまわりに漢字がならべてある。よく見ると、
ひらがなの配列はいろは順、、漢字は部首順になっている。ただしその部首順も単純
ではない。使う頻度が考慮されている。めったに使わない漢字が目の前にあっても
しかたないのだ。・・最頻度の漢字、普通の漢字、めったに使わない漢字を、それ
ぞれべつの位置に部首順にならべておく。活字をすばやく拾うという点から見れば、
これは非常に賢明な並べ方といえるだろう。」
 こうしてブログを作成しているパソコンのキーボードも、キーボードの配列は
使用頻度を基礎にして組み立てられていますが、キーボードでありましたら、
たいした数ではありませんので、まずまず覚えることができますが、かっての活字
棚というのは、配置を覚えるのにはずいぶんと時間がかかるものとなっていて、
職人として弟子入りをしたら、まず最初にならうのが、新たな活字を棚に補充すると
いうものであったとのことです。
 こうした下働きを延々としてから、やっと文撰作業につけるのでありますからして、
職人修行というのは、たいへんであります。