国語の教科書25

 国語の教科書にある「ささやかな日本発掘」(青柳瑞穂)は、同名の著書の
最後におかれた70ページほどのものです。「ささやかな日本発掘」という本には、
「掘出しということ」と題された文章があります。
 まずは、青柳瑞穂の「堀出しということ」の冒頭から引用します。
「 掘出しということは誰にとってもうれしいものに相違ない。散歩の途次、ふと
立ちよった知らない古本屋で、かねがね自分のさがしていた絶版の詩集をみつけたり、
場末のガタクタ屋で、葡萄酒の栓抜きを買ったら、それには本場のフランス製の
マークがついていたり、事はそれほど大でないにしても、歓びはいつも大きい。
それは安い金で、より高価なものをせしめたという金銭的な歓びよりは、自分の
幸運と自分の目をうれしく思うところの、むしろ、精神的な歓びであるようだ。」 
 いまから50年も昔に書かれたものであります。「フランス製の栓抜き」という
のは、いまではワインオープナーというのでしょうが、その時代にコルクで栓を
されたワインなど、田舎では目にすることもありませんでしたので、ワイン栓抜きと
いわれても、ビールの栓抜きのようなものを思い浮かべるしかなかったでしょう。
「散歩の途次、ふと立ちよった知らない古本屋」というのも都市部での話しであり
ますね。いまでは、当方の住む田舎のまちにもブックオフや定価の半額で販売する
お店がありますので、散歩の途中で寄ったりすることはできるのですが、知らない
店というのはないことです。
 掘出しということは、ブックオフで絶版の詩集を見出すことであると思っていま
したら、そんな小さな話しではありませんでした。
「掘出しという言葉は、書画骨董から来ているといってもいいくらいだから。
 骨董であるからには、それは百年、二百年、何百年と、古いものでなければなら
ない。従って、作者は現存していないのだから、果たしてそれが本物であるかどうか
判らない。・・この世界には偽物が横行している。その中から本物を、それも優れた
本物を、拾い上げるのだから、まさに浜の真砂の中から、一粒のダイヤを探しだす
ようなものだ。」
 当方が購入する本は、せいぜい何十年か前のものでありまして、そこには偽物と
いうものがありませんので、青柳瑞穂のいう掘出しもないのであります。