国語の教科書24

 本日も臼井吉見さん「三つの本」からであります。この文章には「卒業してゆく
諸君へ」と添えられていますが、このような表記は「ささやかな日本発掘」について
文章のなかに見ることができます。
「 卒業してゆくきみたちの前に、いろいろな出会いが待っていることはいうまでも
ありません。一冊の書が、ひとりの師が、ひとりの友が、一つの事件が。それが
さらに別のものを呼び出すにちがいない。そしてそれはおそらく、きみたちの生涯を
決定するでしょう。それはきみたちの人生に、思いがけないほど大きな、明るい窓を
開くかもしれない。破滅の暗い扉を閉ざすかもわからない。青春とは、こうした予測
できない運命的な出会いの可能性をどっさり蔵している、人生の短い一時期になづけ
られた名まえです。」
 一つの出会いに誠実に対応すれば、次の出会いに恵まれる実例として青柳瑞穂の
「ささやかな日本発掘」をあげています。

ささやかな日本発掘 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

ささやかな日本発掘 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

「 まず、ある村との出会いから始まっています。
 浜松駅からバスで三方原の古戦場を過ぎ、深い渓流に沿って進む。渓流がやがて
野川になると、丘陵に囲まれた狭い盆地に出る。日本のどこにでもある、あたりまえ
の農村であるが、青柳さんは、この村が好きになり、ひんぱんに訪れては、村人と
なじみを重ねることになります。それというのも、ここは青柳さんの妻であり、
今はなき人の生まれ在所だからです。妻への愛情のため、彼女の生まれて育った家、
彼女の通った小学校への道、ひいては、この村全体を熱愛するようになったという
のです。」
 この教科書で青柳瑞穂のことは知ったのでありますが、学生時代の時に、この
元版をみつけて購入をしました。青柳瑞穂はフランス文学が専門ということになり
ますが、当方にとっては「ささやかな日本発掘」の人です。