青柳瑞穂の掘出しものというのは、ちょっと普通とはスケールが違います。
最近でいいますと、農家の主婦がはたけを耕していたら、土のなかでかちっと
音がして、それを掘出してみたら、それは中空土偶というもので、このように
完璧なかたちででてくるのはめったになく、縄文のビーナスといわれて、発見
からそんなに時を経ずして国宝に指定されたというような話しと似ています。
青柳瑞穂は、農家の主婦とか遺跡発掘の学者ではありませんから、掘出すと
いっても、農家を訪問しては、このようなものがあったら見せてほしいと伝え、
あれば譲り受け、それから検討を加えて、そのものがもっている真の価値を
明らかにするというものです。それが目利きまたは骨董愛好家の役割です。
たとえば、田舎で次のような言い伝えがあったとします。臼井吉見さんの
教科書の文章から引用です。
「この寺には古くから由緒ある面が伝わっていたが、その昔、村に変な子どもが
いて、その面を出してもらってはながめあかし、さては、ぜひとももらい受け
たいと言って、きかなかったそうだ。その当時の方丈も折れて、聞き届ける
ほかはなかったという。面はそのままになってしまったらしく、テレにはそれ
らしいものは見つからないとのことだった。この妙な話は、郡誌の記事と符合
するので、青柳さんは驚きました。・・・
それからというもの、その失われた面は青柳さんの心を離れなかった。」
この村の集落には二十戸ばかりであるとのことですが、青柳は、これを徹底
的に調べて、この面を見出すのでした。この面は、その裏面の文字から鎌倉時代
に作られたことがわかるのですが、このように時代を特定できるものとしては、
一番古いものだそうです。
このようにして見つけたものには、面のほかに尾形光琳筆の「肖像画」と、
農家からでた平安時代の代表的な遺品といわれるつぼなどがありますが、
それから半世紀以上もたって、いまでも日本の農村には、そのような骨董品が
ひっそりと眠っているのでしょうか。
筑摩の国語教科書には、青柳さんが掘出した「石皿」と「能面」の写真が
掲載されていますが、もともとの「知られざる日本発掘」には、残念なことに
図版がなくて、それがどのようなものであるかは想像するしかありません。
青柳さんに関する図版がたくさんあるというのは、以下の本でありました。
- 作者: 青柳いづみこ
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2006/11/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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