元旦の新聞広告から

 元旦の新聞というと、出版各社の広告をはじめ、各社の今年にかける意欲の
ようなものを感じさせるものが目につきます。最近になって派遣社員の雇いどめ
などで社会的な批判を浴びた会社が、地球環境についての貢献のようなことを
訴える広告をみますと、ちょっと複雑な気分になることです。
 朝日新聞は、出版社の全面広告が多くて、これを見るのが楽しみです。
 小学館は女性の四世代が読書(読み聞かせ)でつながっていて、「いつも
かわらないお母さんの愛情で、子供たちをつつんであげてください。」という
言葉で文章は終わっています。小学館は、子育てにおける父親の役割は認める
ものの、具体的な関与には期待していないようにも思えます。
 集英社は、前日の紅白審査員をつとめていた姜尚中さんが、研究室で新書を
読んでいる大きな写真で、そこには「人は、本と向き合いながら自分と向き
あっている。」とコピーがありました。ここには、他者が入り込む余地がない
ようにも思えます。
 新潮社は、ともに同年生まれの「太宰治」と「松本清張」の文庫をとりあげて、
「百年度だって、人間はきっと変わらない。」といっています。太宰と松本清張
さんのともに、あまりなじみでないせいもありまして、いままで、この二人の
年齢のことを考えたこともありませんでした。百年後もこの二人の作品は読まれて
いるでしょうか。
 講談社は、創業100周年とあります。「書き下ろし100冊」というのが、
これを記念しての事業であるようです。文芸書、児童書、ノンフィクション、
学芸書を中心に幅広くとありますが、具体期な著者は見えてきません。
創業100年というのは、一番古い出版社の一つではありますが、まだ古いところ
がいくつかありそうです。
 岩波書店は、新書創刊70年を中心に、今年の新企画がならんでいました。
 出版系の全面広告で一番目を引いたのは、朝日新聞第2部にあった「千年に
一度の一年へ」とある「石森プロ」の意見広告であります。
石の森章太郎の作品「サイボーグ009」にかけたものでありますが、全面に
大きく「サイボーグ009」の主人公を初めとする登場人物のイラストが配置
され、「石森プロはこの作品の収益の一部で、「世界平和とよりよい人間存在の
あり方に貢献する活動を始めます。」とありました。
 元旦にだす新聞広告というのは、いつごろから準備するものかわかりませんが、
雇い止めで批判を浴びた各社の広告をみる限り、そのようなマイナス部分を感じ
ることはできません。
 コミックはおたくを生んで、おたくは産業社会では負け組に分類されるような
ところがありましたが、これに対して、コミック雑誌を刊行している大出版社から
メッセージがあってもいいと思うのですが、石森プロの広告に救われる思いが
しました。
 「世界は もう、サイボーグ009を必要としなくなったか。」というコピーで
終わる石森プロの全面広告は、大企業や大出版社のものよりも訴える力が強い
ことです。