当方の購読している新聞には月に一度くらい(?)「リーダーたちの本棚」
という全面広告が掲載されまして、主に会社経営者が自分が影響を受けた本
を5冊紹介しています。
なるほど会社経営される方々は、このような本を読んでいるのかと思いつつ
も、当方が読んでみたいという本があがることはめったにありません。
なかには、こんな本ばっかり読んでいるのかなと思う人もいますし、何冊かは
まともな本をあげていても、一、二冊は自己啓発本のようなものを潜り込ませた
りしたりです。
そんなふうに思いながら、本日に登場したアフラック生命の古出社長(1960
年生まれとのこと)があげている5冊を見ましたら、なんとも当方の世代に近い
感覚でのセレクトになっていました。
たいした契約金額ではありませんが、アフラックのがん保険に加入しておりま
す当方は、いましばらくはこの契約を継続しましょうと思ったことです。
霞が関の官僚を多くだしている大学学部の卒業生でありまして、霞が関に就
職された人たちが、忖度の泥沼にはまっているのとは好対照の生き方になって
いるのかなであります。たぶん、どこかで日本の会社組織から飛び出したことと
も関係があるのかもしれません。
この欄であげているのは、「尊敬する作家の、何度も読み返している作品」と
なるのだそうです。本文には、次のようにもあります。
「本好きは昔からで、特に高校から大学時代にかけては精神的に飢えていたの
か、読書に耽りました。浪人時代は予備校帰りに神田の書店に入り浸り、家では
勉強もそこそこに本ばかり読んでいました。多感な頃の読書が自分の人間形成
に影響し、生き方を定めたと言えるかもしれません。」
ということで、尊敬する作家たちについてであります。作家と作品は、次の純に
なっていました。
どうやら日本の作家で一番好きなのは辻邦生さんのようであります。辻作品
は何冊かタイトルがあがっていますが、この「西行花伝」は「幾度となく読み返し
ています」とあります。うーむ当方は、この作品けっこう苦労して読んだこと。
「村上春樹氏も大好きな作家です。」とあります。読むたびに新しい発見がある
とありますので、これは発表された時に読んだのでありましょう。
三冊目は加藤周一さんの「羊の歌」ですが、「加藤周一の本も随分と読んで
います」と記しています。「薄い本ですが、時代の空気や施策のプロセスが凝縮
されていて、さながら『ブッデンブローグ家の人々』、あるいは加賀乙彦氏の『永
遠の都』を読みきったような読後感でした」とコメントありです。
次は、吉田健一さんの「瓦礫の中」であります。作家のなかでは文体が好きで、
高校時代から何度も愛読していて、友人に誘われた朗読会で披露したことがある
のだそうです。吉田健一の文体を好きにならなくては、愛読者とはいえないですね。
最後にあがったのは、片山杜秀さんの音楽評論シリーズで、ここではこれを
あげるとありました。ほぼ同年代の片山さんの本を読んで、武満や伊福部など日本
の作曲家も聴くようになりましたとありました。
当方もつい何日か前に、自分よりもちょっと若い読書家と最近の読書や気に
なった本などについて話をすることができたのですが、語っていることの深さは
おして知るべしですが、言及した作品などについてはほとんどがかぶることで
ありまして、その昔であれば、このような読書人というのは経済界にも多くいた
ように思いますが、最近はどうなのでありましょう。
一般教養というかカルチュアスタディーズにひどく無関心な社会というのは、
気持ちがすさんでくるのではないでしょうか。