平野甲賀さんの「僕の描き文字」を見ておりましたら、「僕のつくった本
1984年の記録から」という文章がありました。平野さんが装丁を担当した
出版物のリストで、平野さんのコメントつきですが、これが4月から12月の
もので、けっこうボリュームがあります。初出はどこでありましょうかと思い
ましたら、これが「水牛通信」でありました。高橋悠治、柳生まちこなどが
やっていたミニコミですが、平野さんは、これのデザイナーでもあったのでした。
毎月、こんなにも仕事をしているのかと思うくらい、本のデザインをして
いるのですが、そのなかには、平野さんのものとして良く知られているものも
あれば、へえ、こんなものもと思ったものもあります。
へえーの一冊と平野さんのコメント
「 気がつけば騎手の女房 雑誌優駿に連載、大宅壮一ノンフィクション賞を
受賞。タイトルどおり。通訳を夢見る女子大生があろうことか・・・。
この本のイラストは堀内さん、ところがカバー用のイラストの手法が、
晶文社のハムレットとまったく同じ、まずいことになった。お願いして中の
挿画から一点選ばしてもらいました。」
これを見て、日本の古本屋で注文をした一冊
「 ヘラヘラ・マガジン 岩田健三郎 冬樹社 書店でとくとご覧ください。
活字、写植はいっさい使わず(帯は別)小さな文字をよう書くよ。
カバーはもちろん絵を使うよといったら、カバーそのものができちゃって、
私としては寸法の訂正をやっただけ。岩田さんには脱帽。」
84年ころに、「ヘラヘラ・マガジン」を図書館で借りたか、どこかで購入して
手にした記憶があります。あの本が平野さんの装丁であるとは、まったく知り
ませんでした。一冊まるっきりが手書きの回覧雑誌のような趣の本(ハード
カバーではありましたが。)であったように思います。なんとなく、自宅の
どこかにあるように思うのですが、数年ごとに、この本のことを思い出すので
ありました。
数年前から兵庫県姫路市にある「小松屋」さんという味噌屋さんから、
「甘酒」を取り寄せをするようになったのですが、姫路から届く甘酒に添えられた
リーフレットにある岩田健三郎さんの版画による季節の祭事を見て、岩田さんが
姫路の版画家であったことと今も健在であることを知ったのでした。