あしたから旅に

 明日から旅にでますので、その準備にかかっております。
 今回の旅は、一カ所にとどまって、しかも部屋からネットに接続可能と
うたっているホテルですので、パソコンを帯同することといたしました。
昨年に、ネットオークションで購入をした古いパソコンですが、前の
持ち主は大阪のかたでしたので、しばらくぶりで里子にでたパソコンが
ふるさとに戻るという趣になります。
 あれこれと予定はあるのですが、優先順位でいきますと古本屋やブック
オフ、普通の本やをめぐるというのは、一番あとまわしとなりますので、
この旅行中でどのように時間をこしらえて(監視の眼を盗んで)本やに足を
運ぶことができるでしょうか。(そんなことのために、来たのではないで
しょうといわれそう。)
 旅のおともは、薄くて読みやすい本がベストですが、今読みかけで、
ずいぶんと時間をくってしまっている安岡章太郎「僕の昭和史」新潮文庫
をもっていくことになりそうです。あと200ページ弱のところまできて
いますのでね。
 いま、読んでいるのは、安岡が62年にソビエト旅行のあとにフランス
パリによったときのくだり。
「 妻子をドイツの田舎町に残したまま、単身でパリにのぼってきたリルケ
孤独は、この足音の描写にもよくでている。ところで、リルケはこの安宿の
部屋のなかをすべて書き尽くしているが。そんなことはない。ひとつだけ
重要なことーすくなくとも僕にとっては、階段を上る押し隠した足音以上に
ショッキングなものーをかきおとしている。それはビデだ。・・・
 いずれにしても、ビデは僕にとっては非日常的な、性的な連想をよぶ
器具であり、そんなものが部屋の中の絶えず眼につくところに据え付け
られてあると、それだけで孤独を意識させられた。とくに夜半過ぎ、
あっちこっちの部屋から水や湯の流れる音がパイプを通して聞こえて
くると、僕は思わず天井を見上げ、道学者となったような気分で嘆息を
せざるを得なかった。」

 小生が、今回の旅行で利用する宿は、中の下でありますが、もちろん
部屋にビデが据え付けられているなんてことはなく、かわりにネット接続の
ためのLAN配線があるというのですから、天井を見上げて、嘆息をすることも
ないでありましょう。