いわば未来の詩人でしょうか

  たしか高校から大学にかけて手にした小説がサローヤン
「我が名はアラム」(角川文庫)でありました。この作者名の不思議な
響きとアルメニアからの移民というのが、エキゾチックに思えたものです。
これの翻訳者は三浦朱門さんでありまして、三浦さんの作品は、まったく
読むこともなく、きているのですが、この作品の翻訳者であるという
ことで、三浦さんに親近感を抱くのでした。(この作品は、晶文社からも
翻訳がでていて、これは別のかたが訳していますが、最初のすり込みが
強いせいか、三浦さん以外では読む気がしません。)
 先月に入手した雑誌「考える人」の特集は「短編小説」でありましたが、
小生の好きな短編というと、この「我が名はアラム」のどれかひとつを
あげることになるでしょう。なかでも一番短いのが、「いわば未来の
詩人でしょうか」というのは文庫本で5ページというもので、中学生にも
おすすめできるものと思うのですが、今は、この角川文庫本は入手する
ことができるのでしょうか。
 たしか、「アラム」というのは、サローヤンの実際の息子さんの名前で
ありますが、息子からみたら父親のサローヤンは、家庭を顧みないとんでも
ない父親であるというようなことを眼にしてから、すこしサローヤンから
距離をおくことになったのです。
 最近、安岡章太郎かの文章を読んでいて、サローヤンのものを読んでいる
というくだりを眼にして、古くに入手した角川文庫を久しぶりに手にしようと
思ったのでした。