「夕陽妄語」

 当方の勤務はカレンダーとおりでありますので、本日は出社です。
連休と連休の合間に2日間仕事をするのですが、あたまと身体が
なまっておりまして、すこし調子が戻ってきたなというところで、
本日の仕事は終わりとなるのでした。
 帰宅をしましたら、「ちくま」「一冊の本」「波」というPR誌が
届いておりました。これを題材になにか ブログを作成しましょうと
思ってみていましたら、次のような記述がありました。
朝日新聞社「一冊の本」の編集後記からです。

加藤周一さんの「夕陽妄語」のカバーは、現在では稀有といって
いい活版刷りの方式をつかっています。装丁者の故田村義也さんが
こだわりつづけた、伝統的印刷方式です。ぜひ手触りをお確かめに
なってみてください。
 葉桜の午後、「夕陽妄語」の活版印刷の現場にいきました。
東京神田の路地裏、小さな木造の工場、使い込まれた古いドイツ製
活版印刷機がたてる重い響き。年輩のおじさんたちの誇りに満ちた
話を聞きながら、・・一冊の本は、多くの人々の手作業と重労働に
支えられています。」

 本文を活版印刷というのもきわめて珍しいことになっていると、
以前にとりあげたことがありますが、これの場合はは表紙カバーへの
印刷のことであります。「夕陽妄語」というと、田村さんが死後に
あっても同じスタイルで続いているのですが、田村さんのこだわりに
応えているのですね。
 このようになってくると、ほとんど版画工房のような趣になって
いるかと思います。下絵を描く人、版を作る人、刷る人と、かっての
版画は分業となるのですが、それとほぼ同じような仕組み(というより
も、印刷の分業が版画作成に導入されたのか。)が印刷にもありと
いうことです。
 この職人さんたちが姿を消すと、同じような書物カバーで同じような
効果を得るためには、職人ではなくアートスタジオというようなところに
依頼するしか手だてがなくなるようです。現在でありましたら、特に
貴重とは思えないのですが、そのうちに貴重な手仕事となるのは、
間違いのないことです。
 「夕陽妄語」の場合は、著者である加藤周一さんも、現在のカバーに
こだわっているということですから、次の刊行は3年後とありますので、
加藤周一さんの健筆を祈ることにいたしましょう。