昨年の回顧 3

  7 百年の孤独 ガルシア・マルケス 新潮文庫

 昨年の早くに「百年の孤独」が文庫になるようだとの情報が流れてから、

いつでるのだろう、どんな本になるのだろうと刊行されるのを待ち遠しく思っ

たものです。文庫化を機会に当方は久しぶりに元版で「百年の孤独」を再読

いたしました。

 この文庫がよく売れたというのは、ほんとに良かったなと翻訳の鼓直さんに

感謝することです。

 昨年に読んだ本で驚いたのは、「東京漫才全史」にあったくだりであり

まして、その本によりますと、漫才師の新山ノリローさんという方は、鼓直

さんの弟さんとのことです。このコンビは名前は聞いたことがありましたが、

この神保喜利彦さんの本がなくては、この兄弟関係については知ることが

なかったでしょう。

8 MOCT 青島顕 集英社

 日本のインテリにとってソビエトロシアが大きな希望の星であった時代が

ありました。この本で描かれるのは、そうしたロシアではなく、体制が変わって

混乱に陥った頃のモスクワ放送の日本語スタッフの話であります。

 ロシアという磁場に引き寄せられた若い人たちがいて、そのなかには当方

の友人の友人もいました。

 庄野至さんの「黒猫の棲んでいるホテル」にも同じような人が描かれている

のですが、「さらばシベリア鉄道」なんていう曲がつくられてのも、そうした時代

を背景にしていることです。

 もちろん、その前に「さらばモスクワ愚連隊」もありましたです。

9 炭鉱の唄たち 前田和男

 読み通すのはたいへんな分厚さでありますが、関わりのあるところを

つまみ読みしても有益でありました。炭鉱地域に生まれた盆踊り唄について

の考察でありますが、大胆な想像も働かせて、読ませます。当方には北海道

で「子ども盆踊りうた」が作り出された背景を知ることができて勉強になりま

した。

 以下はコメントなしで

10 マルクスに凭れて六十年 岡崎次郎

11 幻のレコード 毛利真人 

12 山の本棚 池内紀 山と渓谷社