思いがけずで

 2月くらいに図書館から借りてぼちぼちと読んでいた本でありますが、

他に誰も予約がはいらなかったこともありまして、ずっと借り続けることで、

めでたく最後のまでたどりつきました。

 最初は、冒頭のところと最後のところだけのキセル読みでもいいかなと

思っていたのですが、読んでいくとなかなか興味深くて、ちょっと小走りに

なったところもありますが、充実した読書でありました。

 ということで、当方の世代の読書人でありましたら知らない人はいないと

いう中野好夫さんについて書かれた本です。(その昔に岩波「図書」に

匿名で「一月一話」という連載をしていて、中野さんの没後に、この著者は

中野好夫さんと明らかにされたのですが、話題の幅広さと読みやすさと

わかりやすさで、あのように書くことができるのは中野さんくらいしかいない

よなと、納得したものであります。)

 この本の著者は1938年生まれの英文学者さんではありますが、「面とむかって

会ったことはないし、もちろん、話をしたこともない。それがどうして中野論を書くこと

になったか」というのがあとがきに書かれています。

 最初は、英文学を通じての学恩でありますが、中野が亡くなってから篠田一士

追悼文「全き人は一気に動く」を読んで、中野をこのように解釈できることが理解で

きず、それから中野の幅広い仕事に関心を持って、書いたものを読むようになったの

だそうです。

 その作業をしているなかで、「中野がこんなにも多く書き、活動もしてきたのに、今

ではほとんど取り上げられなくなっていることが」気になったのだそうです。

「中野の残した仕事を知るほどに、彼の業績、中野という存在にもう一度目を向け、

彼の残したものにもう一度光をあてなおすことが必要でないかと思うようになった。」

 その思いが500ページを超える著作となったわけです。

 これを読んだら、中野好夫さんの手によるものを読んでみたくなりますが、最近は

どのような本が流通しているのでありましょうね。岩波新書の沖縄に関する著作は

ありそうでありますが。