今月から新連載で

 先日に届いた岩波「図書」に「日本書物史ノート」という新連載が始まりまし

た。一回目のタイトルは「写本と版本で織り成す和本の歴史」とあり、著者は

佐々木孝浩さんとなります。

 当方は、この世界にはまるで明るくなしで、これまで読んだりしたのも岩波

「図書」に連載されていた中野三敏さんのものくらいでありました。中野さんが

亡くなって3年ほどになりますが、やっとこのような連載を目にすることができ

るようになりましたか。

 今回の佐々木さんの連載初回の書き出しでは、次のように読者を掴んできます。

「みなさん本はお好きですか?『図書』の読者の方にする質問ではありませんよ

ね。でも『好き』とお答えになった方は、読書が好きなのであって、本の存在そ

のものが好きというのではないのかもしれませんね。形や大きさ、表紙の色や

デザインも含めた書物の形態は、書物の外見であり、内容に興味をもってもらえ

るかどうかに大きく影響します。だとすれば、内容を理解するためだけではなく、

書物の形態や外見の意味するところを見極める行為も、広義の読書と読んでも

よいのではないでしょうか。これに同意いただける方は、私の考える『本好き』

なのだと思います。」

 当方などは、ほとんど変態でありますので、本好きといっても内容よりも、

書物の形態のほうに興味が向いているのでありまして、こういうのもまた「私の

考える『本好き』」ということからは外れるのでありましょう。

 それにしても、この文章にはいろいろと教えられることが多いことです。

 もうひとつ今月の「図書」には、三橋順子さんの「いろいろつながる話」と

いう文章が掲載されています。

 「図書」から寄稿の依頼があった三橋さんは、「『ほんとうに、私なんかが

書いていいのですか?』と確かめると、『図書』の編集長がぜひ三橋さんに、と

のことです』と編集者氏。よし、これで言質は取った。『図書』にあるまじき

卑俗なことを書こう。」と書いています。

 あるまじき卑俗な内容であるかどうかは、読んでみて判断でありますが、三橋

さんの新刊が岩波から刊行となることで、今回の寄稿になったようであります。