今月も残り少なくなったことで出版社のPR誌が届いています。
昨日には「ちくま」7月号が、そして本日には新潮「波」が届きましたです。
「波」でいつも楽しみにしている「編輯後記」に目を通してみることにです。
今回の後記の話題は、「波」先月号に掲載した文書についてであります。
「先月号に『四畳半襖の下張り』を掲載しました。これを掲載した雑誌(面白
半分)が押収され、編集長(野坂昭如氏)と発行人(佐藤高尚氏)が起訴され
たのは丁度50年前の事。」
今から半世紀前でありましたら、「四畳半襖の下張り」はわいせつ文書であり
まして、それを活字にして販売しただけで、お縄頂戴となるのでありました。
文書がわいせつであるあるのかどうかは、お上が決めることでありまして、わい
せつ文書を狙って頒布しても見逃されることもあれば、思ってもみないところで
呼び出しになることもあったようです。(過去形であるのかどうかですが。)
当方の記憶に残っているものとしては、四畳半をのぞけば、写真家荒木経惟
さんのものなどを掲載した雑誌が、お上の神経を逆なでした事例がありました。
あれは写真でありましたので、文字で書かれた文書としては何があったでしょ
うかね。
後記には「その後も猥褻か否かをめぐる攻防は続き、摘発まではされずとも、
編集長が警視庁に呼び出されるのは初中終(しょっちゅう)で、『小説新潮』
の編集長(川野黎子氏)が行った時は『ムチムチした白い太腿』という文章に
赤線が引かれていた由。」とありまして、近年まで攻防は続いていて、今も
そうなのでありましょう。
ちなみに、「四畳半襖の下張り」を掲載した「波」6月号ではお上からの呼び
出しはなかったようで、それはすこし残念であったようです。
新潮社としては、以前にアンソロージーのなかに「四畳半襖の下張り」は収録
しているとのことで、この時の経験で呼び出しがないことはわかっていたので
しょう。(杉本彩責任編集「エロティックス」)
それにしても、お上というのは、今はここまでは大丈夫ですよというような
メッセージは発しないものでありますか。