なんといつの間に京大へ

 そういえば4月に都会の大書店へといきましたら、大きく広告が貼られていて、

そのうえ置きチラシまで用意されている本がありました。

版元は力が入っているなと思ったのですが、大部のものでありますし、買っても

読めそうもないので、チラシを持ち帰ることもなしでした。

 そういえば、これと似た趣向の本は、その前に筑摩書房から「東京の生活史」

として刊行されていました。これは行きつけの図書館にありまして、眼にしたの

でありますが、結局借りだすことができなかった。

 本日に新聞夕刊を見ましたら、4月に書店で宣伝されていた本が刊行になった

と紹介されていました。

 見出しには「聞かせて あなたの沖縄 100人が語った戦後史 出版」とあ

りました。

 沖縄タイムスが昨年の5月15日の沖縄復帰50年を前に、100人の聞き手

を募集し、それぞれの人が語り手を選んで生活史を聞き取ったものが、これの

元になっているのだそうです。

 この本には石原昌家・岸政彦監修とあるのですが、本日の新聞には岸政彦・

京都大学教授(社会学)との紹介で、これには驚くことです。

 この4月から京都大学に移っていたのですね。知らなかったことで、ユニーク

な経歴の先生でありますので、期待も大きいのでありましょう。

 5月に開催された沖縄での出版記念シンポジウムで岸さんは、「聞いて書か

なければ消えてしまう、一般の人の語りを残すことに深い意義がある。ここに

収められたのはどれも、『沖縄を生きる人々』の人生の物語だ」と話したのだ

そうです。

 もちろん、この「一般の人の語りを残すこと」というのは、沖縄に限った

ことではなく、当方の住んでいる地域においても同じでありますね。

 東京、沖縄と続いて、今は大阪を準備中であるとか、このような試みが

さらに広がっていくことを望むことですが、もちろん各地で地道にそうした

ことはなされているのでありますね。

 朝日新聞では、5月16日に「耕論」というページで「沖縄の語り方」という

特集を組んでいましたが、そのなかで安里長従さんが次のように言ってました。

「本土の左派は沖縄に寄り添うと云いますが、日米安保に反対なので沖縄から本

土への米軍基地移転に反対します。結果、基地は沖縄に置かれ続ける。沖縄の負

担軽減が目的ではなく、自分たちの願望を実現するために沖縄を手段として語っ

ているわけです。

 ここには構造的な差別があります。本土が優先され、沖縄が劣後という構造的

差別です。沖縄の貧困も基地問題も、『自由の不平等』という同じ根から生じた

構造的な問題なのです。でも、本土の沖縄論はそこに触れません。」