富岡多恵子さんが亡くなったとの知らせに目にして、小野十三郎さんの本を
引っ張り出してくることになりです。
編集工房ノアから1983年に刊行となったものを、当方が購入したのは、
十年くらいも前でしょうか。ほとんど読むこともなしでありましたが、富岡さん
の訃報のおかげで、富岡さんに関するところをつまみ読みから始めることになり
です。
小野十三郎さんは1903年生まれで1996年に亡くなったのですが、この
世代の人が書いたものは、ほんとうによろしいことです。
若い頃から付き合いのあったアナキスト詩人などは、この「日は過ぎ去らず」で
目にしなくてはほとんど知ることもなかったでありましょう。
「植村諦は、なによりも詩が好きで好きでたまらなかった男だったと思う。秋山が
その著『アナキズム文学史』の中で言っているとおり、『詩を書くよりも革命運動
を』の時期が植村にあったのは事実だが、なおそんな日々の中にあっても、詩が
好きな彼は、内外の新しい文学思想や詩運動に、強い関心を持っていたことがわか
る。・・・
同時代のアナキスト仲間の詩人の中にも、植村の詩は感傷過多でやりきれないと
言う者がいたが、彼はそんなうわさにいささかも動じないで、人間が感傷的になっ
てなぜ悪いのだと、逆にひらき直る頑固一徹さを、植村は詩作りの方法として、
死ぬまで持ち続けていたようである。」
アナキズム詩人というのは、この時代に存在しているのでありましょうか。
こういう文章を読んでみますと、植村諦さんの詩というのも目にしてみたいと
思うことです。