読めているのは

 先日の札幌遠征には、電車の中で読むものとして北村薫さんの「いとま

申して」を持参したのですが、途中からは散策の途中で購入した絲山秋子

さんの文庫本に切り替えて読むことになりです。

 絲山さんのエッセイというか雑文でありますが、これがめちゃくちゃに

面白いのであります。すごいな絲山さんと思いました。絲山さんの小説で

何をお勧めといわれたら迷いますが、まずは「絲的」とタイトルされた

エッセイを読んでみてはとすすめたくなります。

 読みながら、ほとんどその昔に読んださくらももこさんのもも缶を思い

だしてしまいました。

 これに収録されているのは、「小説現代」に連載されたもののようですが、

当方が一番喜んだのは「禿礼賛」というものです。

「何度でも言うが、私は決して馬鹿にしているわけではない。禿は素敵なのだ。

 それで、私の場合は禿好きである。可愛がってくれた祖父や大伯父、尊敬する

主治医、一番好きだったギタリスト・・・みんな見事な禿だった。

 残念ながら見事な禿と恋愛したことはない。きっと来るだろうと期待していた

のに、いつまでたっても芽の出ない男ならいる。執拗に薄い部分を隠そうとする

さもしい根性が嫌になって別れた男もいる。確信をもって楽しみにしていたら、

毛のあるうちにと焦って結婚してしまった男もいた。これは!と思う柔らかそう

な髪の物件を押えて、長く付き合ううちに果物が熟するように高まる完成度を

目のあたりに出来れば、それはとても素敵なことだと思う。」

 全国の薄毛の男性に力を与えてくれる(?)文章でありますが、このような

考えの方がもっと増えましたら、男性かつらのメーカーさんは商売になりません

でしょうに。

 それにしても、「長く付き合ううちに果物が熟するように」とはほんとに好き

という気持ちがはいっているように思いますし、薄毛男性におすすめの一冊です。

 絲山さんの個人のページを拝見しておりましたら、2004年から絲山賞(一年

間で絲山秋子が読んだもののなかで 一番面白かった本に差し上げている賞ですと

あります。)いうのを自分のページで発表していまして、その二回目2005年

赤染晶子さんの「うつつうつら」でありました。その年の「文学界」に掲載さ

れた作品ですが、その翌年が多和田葉子さんなのですから、すごい目利きです。

 今月は絲山さんの新しい文庫本がでるとのことです。半分はすでに文庫となっ

ているようですが、収録作品がかわっているので、これも買うことになるのかな。