絲山秋子さんが第二回絲山賞としている赤染晶子さんの「うつつうつら」を
読んでやりましょうと検索をかけてましたら、めでたく図書館にあることがわ
かりました。
これはありがたいと借りだすことにしたのですが、なかに本の帯が貼り付けて
ありまして、そこには辻原登さんの選評(文学界新人賞「初子さん」の)と絲山
秋子さんの推薦文が掲載されていました。
この「うつつ・うつら」は2007年の刊行でありますが、赤染さんの芥川賞受
賞は2010年で、絲山さんの芥川賞は2005年でありましたから、絲山さん自
体がまだまだ若手作家でありました。
その推薦文を引用であります。
「多分赤染さんという人は相当にヘンな人だと思います。もっともっと図々しく、
当たり前にヘンであって欲しい。私は読み続けます。」
この推薦文は、絲山賞の選評からとられていることがわかりました。絲山賞の
段階では、まだ単行本になっていませんでしたので、この先に出版されることを
期待するとありました。
これが一冊となったときには、「初子さん」「うつつ・うつら」の二作品収録
で、合わせて153ページですから、ほんと作品が少ないことでありまして、編集
者さんはご苦労なさったでありましょう。
ということで、「うつつ・うつら」を読んでみることにしたのですが、これが
けっこう不思議な小説なのですよ。
書き出しは、お笑いの人の語りから始まって、これはコミカル作品の仕立てな
のかなと思って進んでいきますと、どんどんとメタな感じになっていきます。
絲山さんがヘンなというのは、コミカル仕立てからメタに移行していくところなの
でありましょうか。ほんとに見事にわけわからん筋のない小説になっていきます。
幻想小説のようでもありで、妄想を描いているようでもありです。
部分的にはコミカルと受け取ることができそうなパーツがちりばめられている
のですが、すぐにあれっと思うことになります。一筋縄でいかないことで、これは
もうすこし読んでみなくてはいけないこと。
「うつつ・うつら」は、もうすこし入手が容易にはならないものかな。