昨日に気分転換のためにアンリ・トロワイヤの「クレモ二エール事件」を手に
してみることにしました。読みすすめることができるかなと思ったのですが、
読みやすくて、しかも面白くめでたく最後のページにたどりつくことができました。
そんなわけで、小笠原豊樹訳 トロワイヤ三部作(装丁が同じで、いかにも連作
のような雰囲気があるものですから、そう記するのですが、もちろん作者がそれを
意図したものではありませんです。)の、次の作品を読んでみることにです。
アンリ・トロワイヤという作家は、日本では伝記作家として良く知られていま
して、中央公論社などからかなり翻訳がでているのですが、もちろん最初は普通の
小説を書いていた方であります。
彼の小説作品が読まれなくなって久しいのを惜しんで翻訳に取り組んだのが
小笠原豊樹さんで2000年代に入ってから、草思社から三冊、そのあと小学館か
ら一冊のあわせて四冊の翻訳を出しています。
「サトラップの息子」の帯には、「小説家トロワイヤ、再発見」とありますので、
いかに忘れ去られていたかであります。
ちょうど今年の春のお彼岸の頃に小学館文庫からでている「仮面の商人」を読ん
でおりましたので、それから半年経過でのトロワイヤ作品であります。(それにし
てもトロワイヤ作品を読むきっかけを作ってくれた「絶版文庫万華鏡」に感謝しな
くてはです。)
vzf12576.hatenablog.com 「クレモニエール事件」のどこがどう面白く感じたのかなと思って、それをつら
つら考えるのですが、日本の高踏フランス文学者からは、「通俗作家、あるいは
大衆作家あるいは娯楽作家に堕した」といわれることになったということですか
ら、まずは仕掛けがあって、すこしペダンチックで、しかも性愛シーンもあると
いうことからは、当方の好きな辻原登さんなどの先行者であるのかもしれません。
ということで、本日からは「サトラップの息子」で、これは自伝的な雰囲気の
物語とのことです。トロワイヤは1911年にロシアで生まれ、1920年に
フランスに移住したとのことですから、その昔の呼び方でありますと白系ロシア
人ということになりますか。